まんぐわ


240414 武装錬金
240324 沈黙の艦隊
240310 鳥山明◯作劇場
240218 ブラック・ジャック前夜
240204 進撃の巨人
240107 め組の大吾
231217 キン肉マンII世
231126 あまいぞ!男吾
231112 巨人の星+新巨人の星
231029 ドカベン+大甲子園
231008 パーマン
230924 追悼 寺沢武一
230910 上野さんは不器用
230820 手塚治虫と戦争
230723 オトナテヅカ
230709 ゾンビ屋れい子
230625 モンキーターン
230605 バクマン。
230514 20世紀少年
230430 MW
230409 打姫オバカミーコ
230326 ちはやふる
230305 暗殺教室
230219 ノーマーク爆牌党
230205 デカスロン
230106 魔太郎がくる!!
221218 ドラゴンクエスト ダイの大冒険
221204 サイボーグ009
221113 コブラ
221009 ハチワンダイバー
220904 行け!!南国アイスホッケー部
220814 ゴールデンカムイ
220710 かくしごと
220612 章説・トキワ荘・春
220605 シルバー・クロス
220501 リボンの騎士
220320 キノの旅
220306 ドン・ドラキュラ
220206 ゲームセンターあらし
211219 キテレツ大百科
211121 灰羽連盟
210829 シュマリ
210502 タッチ
200809 キン肉マン
200614 企業戦士YAMAZAKI
200524 からくりサーカス
200405 ドラえもん
200209 ぼくの地球を守って
191117 三つ目がとおる
191019 月の子
190915 三億円事件奇譚 モンタージュ
190728 目玉焼きの黄身 いつつぶす?
190630 原作者クメタ
190609 ジゴロ次五郎
190331 カメレオン
190303 どろろ
190127 エンジェル伝説
181216 今日から俺は!!
181028 白暮のクロニクル
180930 ドビンソン漂流記
180902 みきおとミキオ/バウバウ大臣
180701 アイシールド21
180520 サバイバル
180422 頭文字D
180204 手塚の落日
171112 ヒカルの碁+デスノート
171001 それでも町は廻っている
170723 海の王子
170528 幽☆遊☆白書
170514 ミュウの伝説
170430 魔人探偵脳噛ネウロ
170409 きりひと讃歌
170312 帯をギュッとね!
170212 蔵、三題
170108 中年スーパーマン左江内氏
161211 火の鳥
160925 ああ播磨灘
160710 うしおととら
160605 未来の想い出
160501 スラムダンク
151220 七色いんこ

 

151220 七色いんこ

 七色いんこは手塚治虫の作品。少年チャンピオンに連載された。永遠の名作ブラック・ジャックが1978年9月18日号の『人生という名のSL』で連載終了した後、ドン・ドラキュラ(1年未満で終了)に続いての連載だ。ただしBJは1983年まで不定期掲載されていた。連載作品とBJと同時に2作品掲載されたこともある。別の言い方をすれば、連載作品があまり人気でなかったためにBJがいつまでも担ぎ出されたとも言える。

 ヤング ブラック・ジャックで唐突に七色いんこが登場したが、元となる作品を読んだことがなかったので遅ればせながら読んでみた。
 代役専門の役者でかつ泥棒という設定は、作中で説明されている理由はそれなりに説得力があるもののやや欲張りすぎな感じがする。
 とはいえ。最終話は一話完結ではなく中編となっており、七色いんこの過去が語られるほか彼以外の主要登場人物の謎も明らかになるという実に読み応えのある作品であった。前もってWikipediaを読んだのを後悔したほどに。

 それはそれとして。
 本作には謎の台詞がある。謎の台詞といってもアッチョンブリケのようにまったく意味不明な言葉ではない。


 日本の国土!
 一番最初はスピーカーから流れる「北方領土を日本に返還せよ」とともに使われており、このときは確かに意味があった(北方領土の日が定められたのは1981年)
 だが、次からはまったく脈絡なく、驚いたときなどに使われている。ネット上にはそれに関する考察が多数あり、どうやらアッチョンブリケほどの支持を得られなかった、巨匠の滑ったギャグという解釈が一般的だ。

 ちなみに1982年2月に起きた「逆噴射」飛行機事故のパイロットの病状について言及しているシーンもあるが、それを言ったらドラえもんのほうがもっと酷い。逆噴射をギャグにしてるからな。


 そうそう、すっかり忘れてた。YBJに登場するトミーは最終話の回想に出てくる七色いんこの師匠で、本作の中でもベトナム戦争の経験が語られていた。彼が特殊部隊在籍中にベトナムで使わされた皆殺し兵器はどうやら手塚のさらに別の作品にも繋がっているらしいが、切りがないのでここまでにしておく。
 → 


 

160501 スラムダンク

 名作スラムダンクは繰り返し読みたくなる。漫画を読んでいるという満足感を与えてくれる。
 ときに一つのコマを何秒間も見つづけたり、前後する二つのコマを見返したり。

 ほかのスポーツ漫画やアクション漫画でも、このような「読むこと」が楽しい作品はそうはないと思う。


 

160605 未来の想い出

 未来の想い出は藤子・F・不二雄の作品。1991年にビックコミックに6回にわたって掲載された。
 当時大学に進学したばかりの私は特に注目することなくスルーしていた。その翌年に映画化され、F先生本人がチョイ役で出演していたことなど知る由もなかった。2003年には本作に登場するキャラのフィギュアが発売され、ネット上で「マニアックすぎる」という声が上がったというところまでは知っていたが、その作品を読んでみたいと思うこともなかった。藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版を買った2000年よりも後のことだというのに。
 そして。藤子・F・不二雄大全集でとうとう本作に触れた。
 老いを実感している主人公・納戸理人なんど りひとだが、実は42歳だった。何だ、今の私のほうがずっと老けてるじゃないか。
 そうそう、この名前が「何度もリピート」を意味していると、読み終わった後にも気づかなかったものだ。

 短編の名手・藤子F先生ではあるが、ループものを描くには尺が足りないように思う。繰り返される人生の描写はごくわずか、ループの自覚も運命に抗いループから抜ける努力も他の藤子漫画と同様に簡素だ。
 納戸理人のキャラデザが藤子Fの自画像とほとんど同じで自伝的要素があるという事前に得ていた知識も、読んでみたら物足りなさを感じるものだった。
 1975年に発表された短編作品分岐点では人生やり直し後、それまでの想い人と結ばれながらそちらのエンドも満足できるものではなかったという皮肉的な内容でピリッと締まっていたので、それと比較してしまうのかもしれない。


 …と、ここまで書いて、世界の漫画読みの中で『未来の想い出』と『分岐点』を対比させて論じている人はいるのだろうかと調べてみたところ、何とびっくり、『マンガで分かる心療内科』の中の人によって語られていたではないか。
 漫画作品としての出来不出来はともかく、自ら行動した者は幸せを手に入れ、やりなおしコンサルタントに従っただけの者はやり直しても満足する人生を得られない。
 そこに教訓を得て、納戸理人よりもオッサンになってしまった私は行動することとしよう。


 

160710 うしおととら

 うしおとらは藤田和日郎の初連載作品。しかし最大限に広げたふろしきを見事たたみきった作品として今なお評価が高い。
 うしとらにパトレイバーに帯ギュにガンバ!Fly Highにめ組の大吾。この頃のサンデーは輝いていたなあ。今日から俺は!!やGS美神を挙げる人もいるだろうが、私は読んでいなかった。

 と語り始めるとキリがないのでアニメの話をする。
 アニメ版ではコミックス全33巻407話を39回にまとめるという省略ぶりでいくつかの物語がカットされている。
 青函連絡船「勇雪丸」のエピソードはカットされてしまったが、それでは白面の者との最終決戦で冥界の門から出てくるシーンはどうなってしまうのだろうと心配していたら。
 → 
 出てきたのはまさかの二代目お役目様・日崎御角! これは嬉しい改変だ。
 それにしても連載終了して20年経ってうしおととらがアニメになるとは思わなかった。長生きはするものだ。


 

160925 ああ播磨灘

 ああ播磨灘は1990年代にモーニングで連載されていた相撲漫画。今となっては漫画そのものよりもメガドラ版ゲームでの播磨体操 第一のほうが知名度が高いかもしれない。
 なぜ当時この作品を読んでいたのかは思い出せない。大学時代に住んでいたアパートには風呂がなかったので銭湯に行った帰りにコンビニで立ち読みをするという習慣があり、コンビニに並んでいる漫画雑誌を手当たり次第に読んでいたのではなかろうか。
 それとYone氏が気分は形而上をお気に入りだった(名古屋ネタがあったから?)という事情も関係があるだろう。

 播磨国を中心とした羽柴秀吉による中国攻めについていろいろ調査してこいつを思い出した。
 全巻読んだ記念として対戦相手を記しておこう。

初場所
 10勝5敗

大阪場所
 13勝2敗 準優勝

5月場所
 14勝1敗 優勝
  千秋楽に播磨灘に土をつけたのは大関紫電海。この場所は2横綱なので全勝優勝を狙う大関播磨灘が千秋楽で横綱と対戦しないのは仕方がない。
  優勝したが横綱昇進は見送られた。初場所の10勝5敗が響いたと言われているが、本当の理由は素行の悪さ。

名古屋場所
 15勝0敗 優勝
  全勝優勝されてしまっては文句をつけようもなく横綱昇進。

ここからが本編

9月場所
番付対戦相手備考
初日関脇立山掌に固く包帯を巻きそれで張り手をかます不良力士。モデルはあの板井(リアルタイムで板井の悪行を知ってるわけではないけど)
2日目大関富嶽いきなり大関戦。プッシュ、プッシュの巨漢力士。ハワイ出身で浅黒い肌。もちろんモデルは小錦。
3日目前2津軽山汗で播磨灘を滑らせようとしたコスい力士。
4日目小結凄ノ尾初土俵も初入幕も播磨灘と同じというライバル。
5日目前1甲斐の山相撲巧者。
6日目関脇白鳳正統派力士。前日は横綱大江川を破るほど。
7日目維新竜幕内最軽量の102キロ。ちなみに関取時代の舞の海は101キロだった。
8日目大関玉嵐稽古の鬼。
9日目前1陸奥桜老婆がラジオを聞くという展開のため人物像の描写なし。
10日目大関若不動今場所新大関になったばかり。不動明王を信奉している。
11日目前8玄海横綱北道山の弟弟子。壊し屋。ここまで9勝1敗だった。
12日目横綱北道山優勝回数6回の横綱。後述の太刀風とは違い、過去2場所で播磨灘と対戦し敗れている。
13日目大関紫電海角界一のスピードと反射神経を誇る。
14日目横綱大江川才能は角界一。だがここまで7勝6敗と成績は振るわない。モデルは大乃国。
千秋楽横綱太刀風横綱在位7年、優勝回数22回の大横綱。過去2場所は休場しており播磨灘と対戦していない。今場所は西張出横綱。

九州場所
番付対戦相手備考
1日目小結竜雲作中の理事長、愛宕山部屋に属する。
2日目大関富嶽対戦相手を廃業に追い込んだ禁断の技・サバ折りの封印を解き播磨灘に再挑戦。
3日目前1武乃富士かつての大横綱・武蔵富士の息子。
4日目前?修羅ノ海上位キラー。内掛けにこだわりを持つ職人。モデルは安芸ノ島。
5日目前2松島播磨灘を尊敬している優等生力士。
6日目関脇白鳳異常な量の稽古、だが痩せることなく逆に体重を5キロ増やして播磨灘と当たる。
7日目小結玄海食事以外は口を開けぬと無言の荒行を己に課す。
8日目大関若不動改め
不動王
先場所播磨灘に四股名の返上を迫られたが、逆により立派な四股名を授かる。
9日目関脇凄ノ尾先場所8日目から16連勝中。今場所は大関を二人倒している。
10日目大関紫電海真っ向勝負でなく蹴手繰りを仕掛ける。
11日目大関玉嵐先場所、播磨灘に「稽古のための稽古」と言われたがより稽古を積んだ。
12日目横綱大江川先場所の敗北で親方が引退するも本人は残り非難を浴びたがその真摯な姿に激励が増えた。
13日目名誉大関北道山先場所、播磨灘に「横綱を返上せい」と言われ横綱から大関に下り精進を重ねた。
14日目幕尻天山初土俵以来49連勝、一敗もしていない怪物。初入幕だがいきなり横綱に挑む。
番外プロレスラーブルーザー播磨灘の綱を奪ったMWA世界チャンピオン。
千秋楽横綱太刀風24億円もの懸賞がかかる。


初場所
番付対戦相手備考
1日目前1竜剣鼻っ柱の強さは角界一。
2日目関脇凄ノ尾先場所「犬ノ尾に改名せい」と言われたが改名しなかった。
3日目八幡幕内上位に休場が続出、ナマコと異名をとるほど体が柔らかい八幡が急遽当てられた。
4日目前12三ツ岩食いついたら離れないしつこさを持つ。親方に反逆し今日が最後の一番。
5日目関脇白鳳正統派力士から一変、心技体の心を捨てて荒ぶるままに相撲を取る。
6日目大関玉嵐今場所は11日興行に決まりさっそく大関横綱戦。生みの母に会い覚悟を決める。
7日目大関不動王不動の中に動あり、動の中に不動あり。後の先の相撲から先の先を取る相撲に変わった。
8日目大関紫電海死を覚悟、理事長にも啖呵を切って土俵に望む。
9日目名誉大関北道山生き恥をさらして再度播磨灘と対戦する。
10日目横綱大江川負けたら廃業を宣言。自らを死地に追い込んで播磨灘に挑む。
千秋楽横綱太刀風防御の円と攻めの円、円相撲の極致に至る。
 富嶽は先場所の播磨灘との一番で腰の骨を折り休場。
 天山は場所前に播磨灘のもとに勝手に入門し背中を痛め休場。
 玄海は場所前に兄弟子の北道山に潰され休場。

播磨灘十番勝負
番付対戦相手備考
1番相手現れず
2番相手現れず
3番横綱太刀風引退した上で刹那相撲を身につけ播磨灘と対戦する。
4番大関から陥落富嶽スモーチャンピオンを倒すため破門覚悟で十番勝負に馳せ参じた。
5番横綱大江川田村正蔵大波を相手に鍛え、播磨灘の怒涛の攻めを受けきって勝つと宣言。
6番前5天山初場所は休場した天山、因縁の対決。
7番八幡体が柔らかい八幡、雨が降り足場が悪い日を狙って挑戦。
8番大関紫電海播磨灘に匹敵する天稟として部屋が異なる太刀風に鍛えられた。
9番新入幕竜鵬新入幕ながら愛宕山親方に見出され北道山により鍛えられた。
10番名誉大関北道山デブではない巨体、怪力。播磨灘に最も近い男、最後の対決。
 白鳳は播磨灘十番勝負に名乗りを上げるつもりだったが、並行しておこなわれた大相撲7月場所(名古屋ではなく東京開催)で天山に半殺しにされた。
 不動王は作者に認められず、出場しない理由すら与えられなかった。

一人巡業
番付対戦相手備考
?人目坊主頭の少年播磨灘に内無双を決め、播磨灘の連勝が途切れる。


 で、以上の対決を独自の播磨ポイント(略してHP)に換算しランキングを作るとこうなる。
 これこれ、これが作りたかったのよね。
順位HP力士9月場所九州場所初場所十番勝負
144太刀風千秋楽千秋楽千秋楽3番
244北道山12日目13日目9日目10番
341大江川14日目12日目10日目5番
439紫電海13日目10日目8日目8番
525若不動/不動王10日目8日目7日目
625玉嵐8日目11日目6日目
720天山14日目休場6番
818玄海11日目7日目休場
917白鳳6日目6日目5日目
1016凄ノ尾4日目9日目2日目
1110八幡3日目7番
129竜鵬9番
139陸奥桜9日目
148富嶽2日目2日目休場4番
157維新竜7日目
165松島5日目
175甲斐の山5日目
184三ツ岩4日目
194修羅ノ海4日目
203武乃富士3日目
213津軽山3日目
221竜剣初日
231竜雲初日
241立山初日

 これを機にああ播磨灘外伝 ISAOも読んでみたのだが、こちらはイマイチだった。
 単なる不良モノで、打ち切りなのか若き日の播磨灘がどのように相撲に出会ったのかがまったく描かれていない。
 不良どもがセックスしたりレイプ未遂したりするのも大いに萎える(チンコが、ではない)点だった。さだやす圭の絵でそんなの望んでないんだよ! こっちが見たいのは男のケツなんだ!
  だからってこんなコマを紹介するのもどうかと思うけど。


 

161211 火の鳥

 手塚治虫のライフワーク、火の鳥。散発的に読んだことがあるはずだが、今回まとめて読んで、どれ一つとして結末を覚えていなかったのには驚いた。アニメ映画化されファミコンでゲームが出た鳳凰編でさえも。
 ただし序盤はそれなりに憶えていた。たとえばウィキペディアに書かれている、黎明編で『後年の版では主人公たちを襲う様々なスタイルの狼の中に、「ファミコン型」や「赤塚不二夫型」等も登場する』というのは記憶に残っていた。だが、今回読んだ手塚治虫漫画全集には「ファミコン型」はなかった。
  「ファミコン型」はカクカクな狼が登場していた、と思う。


 もう一つ記憶にあったのが太陽編だ。戦に敗れた主人公は、顔の皮を剥がされて狼の皮を被せられる。その壮絶な導入部…ではなく、オババにイチモツの元気の良さを指摘されたときの反応を。
  あら立派。

 きっとオトナになりかけた頃に読んだのだろう。大学のサークル長屋の法研に火の鳥の愛蔵版って、あったっけ。
 とにかく、死ぬ前にこれを読むことができてよかった。これで生涯の宿題をひとつ片付けたぞ。


 

170108 中年スーパーマン左江内氏

 中年スーパーマン左江内氏は藤子・F・不二雄の作品。1977年、漫画アクションで連載された。ふむ、クレヨンしんちゃんのアクション仮面の先輩といったところか。
 藤子・F・不二雄大全集では未来の想い出とで一冊の本になっている。

 主人公の左江内(下の名前は不明)は45歳、ごく普通の中年男。妻に蔑ろにされたり、出世競争に敗れたり、親子ほどに年の離れた同僚の女の子に好かれる妄想をしたりしている。
 そんな彼がスーパーマンになって扱うテーマは、娘の不純異性交遊、美人局、ぼったくりバーなど。これで面白くないわけがない。1年の連載、14話で終わってしまったのは実にもったいない。上の子(娘)のエピソードはいくつかあるが下の子(息子)はほとんど出番がないもんな。
 もう少し連載が続けば、のび太のパパなど他の藤子F作品に見られるシチュエーションを、子供目線でなく中年男の物語として読めたかもしれないのに。たとえば、何度も失敗しているクルマの免許にまた挑戦するぞとか、運動不足解消のためにジョギングを始めるとか、男であっても料理のひとつくらいできねばと台所に立つとか。
  変ドラの人もここで大笑いしていた。と思う。

 未来の想い出はハッピーエンドのストーリー漫画なので、道徳の授業で優等生が先生に答えるような感想を読後に抱いた。
 だが、本作は基本、ギャグ漫画。主人公と同じ年齢になって、この作品をより楽しめるようになったことを、純粋に喜ぼうではないか。


 

170212 蔵、三題

 小学生時代、金持ちの友人がいた。彼の家には土蔵があり、何度か中を見せてもらったことがある。旧東海道、かつては国道1号だった主要道路(後に市街地を避けるように国一バイパスが作られ、国一の指定から外れた)沿いにこのような蔵のある屋敷を持っていたのだから、今思えばかなりの金持ちだったのだろう。「蔵が建つ」という慣用句があるが、私の実体験としても蔵と金持ちは不可分なものだった。
 このようにナウなヤングである私にとっては蔵は単なる富の象徴だが、大正から昭和中期にかけての地方にとって蔵は金持ちイコール有力者の権利の象徴だったのではなかろうか。

 手塚治虫と藤子・F・不二雄がそれぞれ、蔵が重要な舞台道具として登場する作品を描いている。いずれも蔵は単なる貯蔵庫ではなく、座敷牢として使われた。身内を、社会から遠ざけ自宅の一角に幽閉するための場。それができるのはただの金持ちではない。お役人にも睨みを利かせることのできる有力者だ。
 手塚作品と藤子作品を並べて語っているサイトは見つからなかったが、絶望先生の蔵に関するあるあるネタで手塚作品と藤子作品が並んで取り上げられていた。さすがは久米田康治、ドラえもんネタを多用するだけでなくまんが道をパロって「久本康と米田治の合同ペンネームである漫画家・久米田康治」というキャラを作っただけのことはある。
  ヒカルの碁の藤原佐為は碁盤の中にいたのであって蔵はそう重要ではないけど。

 財力だけでなく権力をも保有する地方の旧家というとひぐらしのなく頃にの園崎家を思い出すが、ウィキペディアによると園崎家には地下牢はあっても蔵を座敷牢として使うというシーンはないようだ。そうじゃないんだよなあ、突発的に身内に異常者が発生したときに閉じ込める、そのための道具は備え付けの牢ではダメなんだよなあ。

 ということでここではノスタル爺と奇子ともう一つについて語ることにする。

 ノスタル爺は藤子・F・不二雄の短編。ウィキペディアを読めば最後までわかります。
 この話を最初に読んだのは2000年から2001年にかけて全8巻で刊行された『藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版』だったと思う。当時かろうじて20代だった私には主人公の心理が理解できなかった。
 だが、今ならわかる。見守ることができるという幸せを。
  このわかりやすさ、そしてテンポの良さ!


 奇子は手塚治虫の作品。戦後日本の動きを虚実交えて描いたこの作品はアドルフに告ぐと並ぶ高い評価を受けている…ということはない。それどころか、話題にするのも憚られるような作品だ。
 なぜならばエロいから。それもインモラルなエロさだから。

 奇子は天外てんげ家の当主が長男の嫁に手を付けて産ませた不義の子。家から出た犯罪者の秘密を守るため、4歳のときに死んだことにされ土蔵に閉じ込められた。この地域の名士は医者も坊主も皆天外の親戚なので、東京から来た刑事を煙に巻くのも不可能ではないのだ。
 そして奇子は外の世界を知らぬまま、美しく成長していく。彼女と接する唯一の男性・実兄と交わりながら。
 ただ、本作は手塚が考えていたより早く終わってしまった。そのため、15歳の次がいきなり27歳になってしまっている。最終章が奇子27歳の昭和47年なのは雑誌連載時の「現在」だからだと思われる。本当はもっと瑞々しい時期の奇子のエロいエピソードも描きたかったが、風呂敷を畳むために割愛したのだろう。手塚によると奇子の数奇な人生はまだまだ続くそうだが、もうオンナとしてのピークは過ぎているじゃん…とか言ったら世の女性たちに怒られるか。
 蔵について述べると、最初は箪笥などが置かれていた普通の倉庫だったが、座敷牢に改造されていく途中の姿も描かれており、実に勉強になる。
  窓は漆喰で塗り固められ、その代わり天井が一部開けられて明かりが取り込まれるようになった。


 で。
 鳴子ハナハルのエロマンガに、という作品がある。
 エロマンガだが、いや、エロマンガゆえに、蔵に関するお約束が踏襲されている。地方の旧家、強権かつ淫乱な当主に犯されていた女たち、といったお約束が。当然だ、エロマンガに読者の想像を超える突飛な舞台装置は必要ない。
 ただ、本作は、数年前に家を捨てた主人公が父の死の連絡を受けて戻ってくるところから始まる物語なので、拷問じみた性行為はあっても長年幽閉される座敷牢は出てこない。
  蔵の中はセックスばかりで内部の描写はほとんどないので不本意ながら外観を。


 蔵は日常でありながら非日常な空間。だからこそ、学校における体育倉庫のように、秘密のエッチがおこなわれるのだろう(取ってつけたような結論だな)


 

170312 帯をギュッとね!

 帯をギュッとね!は1989年から1995年にかけて少年サンデーで連載されていた柔道漫画。
 舞台は浜松。作者の河合克敏は浜松市(平成の大合併の前なので正確には別の地方自治体)出身なのだ。
 究極超人あ〜るが緩く楽しい部活の理想形なら帯ギュは真面目に楽しい部活の理想形。ちはやふるでも見られたが、部活動のあるべき姿を巡って部員たちが分裂しそうになるなんて最高じゃないか。悩め若者よ。

 主人公たちがいる浜名湖高校のモデルは作者の出身校である浜松湖東高校。文化祭のシーンで言及されていたが、鶴田謙二もこの高校の出身。ウィキペディアによると著名な柔道家はいないようだ。

 我が浜松西高は作中の進学校・佐鳴高校の外見上のモデルで、私の一学年上に高校卒業後の1992年バルセロナ五輪で銀メダルを取った溝口紀子がいる。「3年生を送る会」で送られる3年の代表として彼女が挨拶をしてくれた、その程度しか知らないけど。
 あと、柔道といえば、柔道着と母が縫ってくれた名札の間に待ち針が残っていて胸に刺さって痛えー!ということがあったっけ。
 漫画家では小林たつよしが西高の卒業生だ。卒業アルバムのおまけとして彼が描いた感動物語の小冊子が贈られて(自宅で調べたところ現物は見つからなかった)、「小林たつよし? コロコロコミックのドラゴン拳の?」と驚いたものだ。好きだったんだよドラゴン拳、正統的なカンフー漫画で。
 大学1年の冬に少年サンデーで彼の新連載が始まった。せっかくなのでウェブ上に書かれていないことを書くと、『戦うF1』がキャッチコピーで格闘技とモータースポーツを組み合わせた競技の漫画なのだが、わずか10週で終わってしまった。ジャンプじゃなくてサンデーでだぜ! 覚えてる? フルメタルボクサーって。

 ああ、帯ギュから遠くはなれた話になってしまった。
 全戦績をメモっておいたがHTML化するのが面倒なので略。
  ペヤングソースやきそばのCM(というか商品)、西日本では流れてなかったんだって。


 

170409 きりひと讃歌

 きりひと讃歌は手塚治虫の作品。
 モンモウ病という恐ろしい架空の病気をめぐる人々のドラマ。

 私が考えるこの作品の最大の特徴は、描写の倒置よる気づきの快感だ。読み物では決して珍しくないこの技巧が、本作では特に効果的に感じた。
 キリストの受難を連想させる主人公・小山内桐人の苦難の道があまりにも壮大だからだろう。

 四国の寒村・犬神沢でモンモウ病にかかり犬の姿になってしまった小山内桐人は、いきなり拉致され台湾の大富豪のもとで人間と犬の合いの子として見世物にされる。
 そもそも何でそんなところに台湾の人狩りがいるんだよ! とツッコみながら読み進めていくと、重大な理由が明らかになる。台湾の大富豪にとって意味があるだけでなく、モンモウ病にとって、主人公にとって意味のある理由が。
 うーん、こうやって客観的に書いても私の驚きは表現しきれないな。

 それにしてもこの作品、まともな人間がほとんどいない。ウィキペディアに紹介されている主要な登場人物を挙げるとこんな感じだ。

小山内桐人モンモウ病に罹患し、犬のような姿で世界を放浪する。なぜ彼が運命に押しつぶされない強靭な精神を持っているのかの説明はないため、読者は共感できない。
竜ヶ浦医師会会長となるため自説を曲げず小山内の説に耳を傾けないだけでなく彼を社会的に抹殺してしまう。まあ、こいつはラスボスだからどんなに酷くても許せる。最後は破滅するし。
占部小山内の友だが竜ヶ浦に逆らえない。下記いずみやヘレンを陵辱する。顔芸が得意。ついには狂い死にする。
吉永いずみ小山内の婚約者。ヒロインだが個性なし。
吉永(父)竜ヶ浦の後援会長で、娘が占部に犯されても竜ヶ浦のことを優先する腰巾着。悲劇的な結末を与えられていないためこいつが一番憎らしい。
たづモンモウ病患者が出た村の娘。閉鎖的なこの村で小山内が受け入れられるには彼女と結ばれる必要があった。モンモウ病を発症した後も小山内を支える数少ない善人だが、いきなり暴漢に殺される。
ヘレン・フリーズ南アフリカで修道女をしていた。白人として、女性として、小山内に勝るとも劣らぬ苦難を受けるが、神に仕える身として人々に尽くしつづける。その高潔な精神が小山内に理解されないのが悲しい。
万大人台湾の大富豪。日夜背徳的な酒宴を催している。それは極貧だった過去の自分への復讐であった。作中ではキチガイ度は低い。
麗花本作で主人公よりも有名な、人間テンプラの女。奇形な男を見ると交わらずにはいられないという異常性欲を持っている。人間テンプラに失敗して死ぬ。
たづを殺したヤクザたづを殺すだけでなく、万大人と犬神沢とのつながり、そしてモンモウ病の原因につながるヒントを占部に教えるという重要な役割を持つ。犬神沢に戻った小山内によって復讐される。

 伏線を確認するために繰り返し読みたくなる作品だが、読み直すと、早いうちに失われる小山内の素顔に違和感を覚えるんだよなあ。

    小山内が日本に戻り復讐を完遂しようとする頃のシーンであり、彼は基本的にこんなに紳士ではない。

 

170430 魔人探偵脳噛ネウロ

 魔人探偵脳噛ネウロは2005年から2009年にかけてジャンプで連載されていた漫画。
 この頃にはすでにジャンプは卒業していたと思うが、ネット上での評判がやけに良かったのを憶えている。DCS(ドーピングコンソメスープ)とか。
 サービス精神に溢れたこの作品は、読むたびに新しい発見がある。
 だが、ここはそれらをすべて書き記すための場所ではないので、もっとも有名な「日付」について振り返っていくことにしよう。


噛み切り美容師事件でヤコは何の役にも立てなかった。
ヤコとあかねの人格が入れ替わるまであと僅かだった、
というギャグ。

の次のページで、いきなりシリアスに。
その静かなる暴言にヤコはショックを受ける。

絵石家氏事件で、
怪盗Xに興味を抱く。

ネウロは人間の感情の機微を解さない。
電人HAL事件でパスワードを解くのはヤコ。

ヤコ、パスワードにたどり着く。
その時彼女の日付が変わった。

HAL事件を解決したとき、日付は変わっていた。
物理的(?)に。
 そうそう、なかったことにされているほど評判が悪い深夜アニメ版だが、ヤコの声に萌えを感じたものだ。あとで調べるとこれが噂の植田佳奈だった。
 だが、いま動画を見ても特にときめくことはなかった。


 

170514 ミュウの伝説

 ミュウの伝説は1984年から少年ビッグコミックに連載された。リアルタイムでは読んでいないが、高校で知り合った友人が貸してくれたのを読んだ。
 ビキニアーマーの美少女が戦うファンタジーもので、青年誌らしくハダカがバンバン出てくる。初潮を迎える少女たちの祭に対し「うむ、この作者は、作品世界に伝わる独自の風俗をしっかりと設定し描写している!」と大いに感心しながら読んだものだ。
 股間をカチコチにしながら。

    そうだったのか、知らなかった。

 1987年、ビッグコミックはヤングサンデーに衣替えする。その情報を作者がいつ知ったのかはわからないが、大急ぎで最後の戦いラスボスとではないがおこなわれ、最終号でその後の様子が描かれた。
 だがそれは物語の結末を意味しなかった。ヤングサンデーで、舞台を現代に変えて第2部が始まったのだ。
 ヤンサンでの第2部はエロ描写がより露骨になった。たぶんそれゆえに人気が低下したのだろう、コミックスで言うと全8巻中7巻が第1部で、第2部は1巻のみという短さで終わった。

    背景はイメージであり具体的なくぱぁを意味しているのではない。と思う。

 当時の私はそのような事情は知らず、ただただ困惑しながら全巻を一気に読んだのだった。
 股間をカチコチにしながら。


 

170528 幽☆遊☆白書

 幽☆遊☆白書は1990年から1994年にかけてジャンプに連載されていた作品。TVアニメは1992年から放映され、今年25周年記念のウェブサイトが作られている。私はアニメはまったく見ていない。土曜の6時半はメシを作る時間だから。
 ウィキペディアに物語の大まかな分類が示されている。こういうの、スラダンや帯ギュやネウロの中でもやりたかったんだよね。
霊体編(仮名) 1話〜17話 人情話。今となっては読むのが苦痛なほど。
霊界探偵編 18話〜51話 蔵馬と飛影が敵として登場。飛影はまだキャラが確立されておらず、やられフラグ立ちまくりの小悪党。
TWO SHOTS 外伝 蔵馬と飛影の出会いを描く。下書きなしの一発勝負、アシスタントを使わず一人で描いた。一人で原稿を仕上げることは作者のストレス解消法だった。
暗黒武術会編 52話〜112話 61話で、六遊怪チーム(鈴駒・酎ら)、Dr.イチガキチーム、魔性使いチーム(凍矢・陣ら)、裏御伽チーム(死々若丸、美しい魔闘家鈴木ら)、戸愚呂チームと戦った。スピーディー!
魔界の扉編 113話〜153話 ジョジョのスタンドのような頭脳戦(実はここが一番好き)を経て仙水忍とのバトル。もうこの頃には連載をやめることが決まっていた。
魔界統一トーナメント編 154話〜170話 わずか17話! トーナメント自体はそのうち数話、最後は3回戦の途中でぶった切られている。
それぞれの未来(仮名) 171話〜175話 後日譚。
ヨシりんでポン! 同人誌 赤裸々トークのほか、幽白は役者が演じていた作品という設定のショートストーリーが描かれている。
 それにしてもあまりにもサクサク進むので驚いた。魔界統一トーナメントの終わりがアレなのはわかっていたが、それを抜きにしても戸愚呂編も仙水編も本当にサクサク進む。戸愚呂弟なんて「100%中の100%!」とかダラダラやってるイメージだったのだが。

    飛影はそんなこと言わない。


 

170723 海の王子

 海の王子は藤子不二雄の漫画作品。記念すべき週刊少年サンデー創刊号からの連載作品で、FとAの本格的な合作でもある。
1954年(昭和29年)6月、上京。10月にはトキワ荘の手塚治虫が入っていた部屋に移る。
1955年(昭和30年)1月、帰省。故郷で原稿を仕上げればいいと考えていたが、そのほとんどを落としてしまう。

 しばらく仕事を干される。

1959年(昭和34年)
 2月11日 小学館の編集者に新創刊となる週刊少年サンデーへの連載を依頼され、引き受ける。原案付きだったが、当初は『海の王子』ではなかった。
 2月13日 講談社の編集者からも声がかかるが、さすがに断る。『愛しり』では翌日のこととして描かれているが、藤子A先生の当時の日記によると2日の差だったようだ。
 2月17日 原作作品がラジオやテレビの脚本家・高垣葵による『海の王子』に変更になる。
 3月17日 サンデーおよびマガジン創刊。漫画作品は海の王子のほか手塚治虫『スリル博士』や寺田ヒロオ『スポーツマン金太郎』などがあった。
 『海の王子』は脚本家が多忙につきスタッフから外れていった。『愛しり』では初回のみ、雑誌のクレジットでは第9回まで。高垣氏はのちのインタビューで2回か3回しか書いていないと語っており、その途中で編集者が脚本を考えた時期があったかもしれない。

 何でもありな戦闘機・はやぶさ号と敵のメカとのバトルが人気だったようで、紙面のほとんどは戦闘に費やされた。後に小気味よい短編を多く描くことになる藤子不二雄もまだ若手。余韻や読後感とは無縁な話の進め方だが、これもまた良い経験となったことだろう。

    主人公はカイン王国の王子。だが名前は不明。妹はチマで、原作者のお気に入りの名前。っていうか、これで終わり?


 そして2017年。にわかに海の王子が注目を集めた。ただしそれは藤子不二雄の作品ではなく、眞子さまの婚約者の前歴「湘南海の女王・海の王子コンテスト」についてだった。
 これを機にもう一度藤子・F・不二雄大全集を読み通そうと思ったが、正直なところかなりキツイな。


 

171001 それでも町は廻っている

 2ちゃんねるの藤子Fスレで、F先生の後継がうんたらかんたらという話題になって、石黒正数の名が上がった。代表作、それでも町は廻っている
 いざ読んでみると、なるほどこれは面白い。日常系だがときどき「すこしSふしぎF」な物語があって、主人公の歩鳥が死んだ後も彼女が存在しないパラレルワールドでも変わらず町は廻っていて、しかしながら彼女は少しずつ確実に成長している。掲載が時系列順ではなくシャッフルされており、繰り返して読むことで伏線に気づく。そんな語りたくなる作品だ。
 下のシーンは2ちゃんねるで紹介されていたもの。ネット上には一つの画像にまとめられたものが存在するが、せっかくなので自分でも切り出してみた。

『それ町』の嵐山歩鳥。

『のび太の魔界大冒険』の満月博士。

 それ町に感動した私は石黒正数の他の作品も読んでみた。ネムルバカ外天楼響子と父さん木曜日のフルット、短編集のPresent for me探偵綺譚ポジティブ先生、と、ウィキペディアで単行本化されていると記載のあるやつ全部。

 私がそれ町で感銘を受けた要素は、残念なことに、そして当然ながら、石黒作品のすべてに見られるものではなかった。だが、それ町ともう一つ別の作品でその要素に出会うことができ、十分に満足だった。
 私が感動したのは、表現者が自分自身と向き合っている姿。小説家とミュージシャンだから表現者と書いたが、より広い定義で言えば、私がそうでありたいと思いつづけている存在、クリエイター。
 石黒作品にはアイデアに悩む漫画家や締切に追われるイラストレーターなど典型的な藤子的表現者も登場するが、ここではノーカンとする。

亀井堂静は歩鳥の師匠的存在。
10年前、高校生の彼女は自身のもう一つの目として歩鳥を育てた。
歩鳥の目があったからこそ、彼女は小説家として大成した。

『ネムルバカ』の鯨井ルカはインディーズバンドのギター兼ボーカル。
自称アーチストたちがヌルく集う場を駄サイクルと斬って捨てるが、
辛辣な批判は自分自身にも向けられていた。

まあ、現在連載中の『木曜日のフルット』は無職女と半野良猫のゆるい話なので
今のところそんな真面目なテーマは出てきていないのだが。
ここでグータラなこいつがバンドに目覚めていたらガッカリだが、そんなことはなかった。

 で。
 ウィキペディアによると、石黒正数がそれ町の前に別雑誌で連載していたのがアガペ -犯罪交渉人 一乗はるか-だ。原作者は別におり、石黒は作画を担当している。
 勢いに任せてこいつも読んだのだが、それがもう、
   
という有様だった。

 ああ、口直しにもう一度それ町を読もう。そして、自称クリエイターとして、作りかけのアレやコレを完成させよう。




171112 ヒカルの碁+デスノート

 ヒカルの碁は1999年から2003年にかけてジャンプに連載されていた。当時、これだけのために毎週コンビニでジャンプを立ち読みしていた。
 本能寺の変を勉強していて、本作の番外編として本能寺の変前夜(というか当夜)の日海の囲碁のエピソードが描かれていたことを思い出した。
 久しぶりに全部読んだが、やはりこいつは面白い。ルールは全然わからないけど。

 記憶にあった名シーン、sai vs toya koyoの一局とそれを一番いいところで見ていたヒカルの気づきには大いに興奮した。
 だが、すっかり忘れていた名シーンもあった。感情のコントロールが下手で星を落とすことが多い伊角に、中国人の楊海が「元々の性格なんて関係ない、習得できる技術さこんなもん」と指摘する場面。
 これを見て私もメンタルの弱さを克服していこう思ったものだ…が、10年以上たっても変わらないのだった。

    読者(主に女子)人気ダントツ一位、伊角慎一郎。


 で。
 ついでにデスノートも読み返した。デスノートは2003年から2006年にかけてジャンプに連載された。
 ヒカ碁が終わったらジャンプを卒業しようと決めていたのでリアルタイムでは読んでいないが、ネット上の盛り上がりはよく覚えている──ヒカ碁終了の裏に韓国の圧力があったという都市伝説とともに。
 こっちも面白いは面白いが、やはりトラップなどはぜんぜん理解できないのだった。

    重要アイテム、デスイレイザー。え? そんなのあったっけ?


 

180204 手塚の落日

 ブラック・ジャック後の少年チャンピオンの手塚治虫はいまいち振るわなかった。もっとも、同時期にはアドルフに告ぐなど傑作も著しており、決して才能が枯れたわけではない。


 プライム・ローズは七色いんこの次の連載作品。今となっては信じられないことだが、かつてロリコンブームというものがあった。キャッツ♥アイにも瞳を追いかける俊夫の同僚として泪に惚れている「オバコン」と愛に惚れている「ロリコン」の刑事がいた(アニメ版には登場しない)ように、ロリコンは現在よりも敷居が低かったのだろう。そしてそんな中、手塚もそれに手を出した。
 そのロリコンっぷりばかりが話題に上ることが多いが、異世界ファンタジーのつもりで読み続けていたら実は現代と結びついていたという展開が当時どれほどの目新しさだったのか興味がある。
 エミヤらの世界の人類、ククリット人とグロマン人。ククリット人の名の由来は読んでいけばわかるが、グロマンについてはわからなかった。まさかグロマンそのものではないだろうな?

    ハダカになってもうれしくない。


 牙人(きばんど)は少年チャンピオンにわずか3回のみ掲載された。ストリートファイターのブランカのような生い立ちの少年の物語。
 特筆すべきは姉(牙人を引き取った刑事の娘)がたいへん美人ということだ。スクリーントーンを削って髪の光沢を表現しており、まるでうるし原智志のよう。
 もしかしたらプライム・ローズへのファンレターで、手塚の画風の古さを指摘されたのかもしれない。

    姉は弟を愛してしまっている。血はつながっていないけど。


 ブッキラによろしく!は映画「グレムリン」のような妖怪SF。打ち切りで終わったようで、最終回も特に最終回っぽくない。
 間久部緑郎が三枚目キャラを演じている、たいへん珍しい作品だ。もちろんヒロインはかわいい。

    トロ子、他作品でも見たことあるような気がするんだけど、どこだっけな。


 ゴブリン公爵はその次に少年チャンピオンに連載された。こちらも連載は1年持たなかった。三つ目がとおるにゴブリン伯爵というキャラが出ていたが、そちらとは関係ない。
 正直なところあまり面白くはない。だが、総理大臣が中曽根康弘のようなキャラだったりと時代性を感じさせる。また、数年後にゴブリン公爵と名乗ることになる中国人青年(主人公とは言えない)は、若い頃には江青の甥であることを笠に着ていたという設定にも驚かされた。
 江青、毛沢東の何番目かの妻というか愛人というか。その悪女っぷりはムダヅモ無き改革で描かれているが、手塚の時代には四人組の横暴とその後の失脚は一般常識だったのだろう。

    ゴブリン公爵と名乗る青年? そんな奴、紹介するに値しない。


 打ち切りが続いた手塚。ミッドナイトではとうとう「アウトローな職業人」という劣化BJに手を付けてしまう。そしてこれが少年チャンピオンにおける手塚治虫最後の作品となった。
 しかもBJ本人が何度も登場し、最後にはミッドナイト自身がBJの患者として扱われ、彼は消滅してしまう。当時どれほど話題になったのかは知らないが、コミックスにも手塚治虫漫画全集にも最終話は収録されなかった(今では収録されている本もある)

    最後のコマ。


 

180422 頭文字D

 頭文字Dは峠の走り屋を描いた作品。
 一話あたりのページ数が無茶苦茶少なかったり、勝負が「相手が、急に何かが飛び出てきたと思い急ブレーキをかけた」「相手が急に体調不良になった」といった突っ込みどころありすぎなな結末だったりする。
 それでもゲーム化されたりアニメ化されたり実写映画化されたり電車が複線ドリフトする同人誌が描かれたりしている。CGやノリノリのユーロビートを活かしたアニメは評価が高く、幸せな作品と言ってよいだろう。

 これの後に始まったギャルを描いた作品は短命に終わり、今はまた本作の続編的作品が始まっている。
 あらためて振り返ると勝負の数はかなり多いな。これでも啓介VS仲里とか涼介VS京一とかメインでない対戦は省略してこれだもんな。

    こんなのばっか。

ドライバー舞台ライバルチームライバル車種備考
藤原拓海秋名山赤城レッドサンズ高橋啓介RX-7(3代目 FD3S型)
藤原拓海秋名山妙義ナイトキッズ中里毅スカイラインGT-R(8代目 R32型)
藤原拓海秋名山妙義ナイトキッズ庄司慎吾シビック Si-R II(5代目 EG6型)ガムテープデスマッチ
藤原拓海秋名山赤城レッドサンズ高橋涼介RX-7(2代目 FC3S型)
藤原拓海碓氷峠インパクトブルー佐藤真子&沙雪シルエイティ(シルビアの顔を持つ180SX)
藤原拓海妙義山赤城レッドサンズ中村賢太シルビア Q's(6代目 S14型)
藤原拓海秋名山エンペラー岩城清次ランエボIV
藤原拓海秋名山エンペラー須藤京一ランエボIII拓海のメンタルボロボロ+エンジンブローで完全敗北
藤原拓海埼玉秋山渉レビン(4代目 AE86型)ターボ
藤原拓海栃木エンペラー須藤京一ランエボIII先行させた拓海を抜けば京一の勝ちというルールで逃げ切ったのみ
藤原拓海栃木小柏カイMR2(2代目 SW20型)カイの親父は拓海の親父のライバルだった
藤原拓海栃木セブンスターリーフ末次トオルロードスター(初代 NA6CE型)
高橋啓介栃木セブンスターリーフ川井淳郎スカイライン GTターボ(10代目 R34型)
藤原拓海栃木東堂塾二宮大輝シビックTYPE-R(初代 EK9型)
高橋啓介栃木東堂塾酒井インテグラTYPE-R(初代 DC2型)
藤原拓海栃木東堂塾OBのプロ舘智幸シビックTYPE-R(初代 EK9型) 東堂社長のショップのデモカー
高橋啓介埼玉チーム名不明岩瀬恭子RX-7(3代目 FD3S型)
藤原拓海埼玉チーム名不明秋山延彦アルテッツァ
藤原拓海埼玉埼玉北西エリア連合坂本カプチーノ
高橋啓介埼玉埼玉北西エリア連合秋山渉レビン(4代目 AE86型) スーパーチャージャー
高橋啓介埼玉チーム名不明卑怯な男1ランエボV啓介は岩瀬恭子のFDを借りて対戦
藤原拓海埼玉チーム名不明卑怯な男2ランエボVI
藤原拓海茨城パープルシャドウ「ゴッドアーム」城島俊也S2000城島はゲロはいてリタイア
高橋啓介茨城パープルシャドウ「ゴッドフット」星野好造スカイラインGT-R(5代目 R34型)
藤原拓海神奈川チーム246大宮智史ロードスター(2代目 NB8C型)
高橋啓介神奈川チーム246小早川ランエボVII
藤原拓海神奈川RTカタギリSV小柏カイMR-Sプロレーサーになった
高橋啓介神奈川RTカタギリSV皆川英雄スープラ(2代目 JZA80型)
高橋啓介神奈川チーム・スパイラル「ゼロ」池田竜次フェアレディZ(5代目 Z33型)
藤原拓海神奈川チーム・スパイラル「ゼロ1」奥山広也シルビア(7代目 S15型)
高橋涼介神奈川「死神」北条凜スカイラインGT-R(8代目 R32型)
高橋啓介神奈川サイドワインダー北条豪NSX(初代 NA1型)
藤原拓海神奈川サイドワインダー乾信司トレノ(4代目 AE86型) 2ドア(拓海のはハッチバックのいわゆる3ドア)


 

180520 サバイバル

 サバイバルはさいとう・たかをの作品。大学時代、単行本のごく一部が部室に置かれていたが途中だけ読んでも仕方がないので読まなかった。そしてその20年後、ようやく読んだ。
 さすがヤングゴルゴ、その生命力は只者ではない。

    ハンググライダーの自作はさすがに無茶だ。


 

180701 アイシールド21

 アイシールド21は2002年から2009年にかけてジャンプで掲載されていたアメフト漫画。ということは、デスノートやネウロと同時期か。
 それほど注目していたわけではなかったが、名乗りがないまますでに登場していることが示された重要人物・ムサシは何者か?など、ネット上で話題になっていたのを覚えている。

 あらためて読んでみると、確かに面白い。大差をつけられ残り時間も少なく絶体絶命→逆転という展開ばかりなのはどうかと思うが、熱いのは間違いない。
 で、流れで読んでいるといつの間にか勝っていてどうやって逆転したの?と疑問に思うことがあったので、しっかりと読んでみた。

神龍寺ナーガ戦
出来事得失点点数備考
一休・阿含の才能がモン太・セナ・ヒル魔を蹂躙する▲ 70-7以下、7点はTD6点+TD後のトライ(キック1点、TD2点)でキック成功を意味する
阿含&雲水、ドラゴンフライ▲ 70-14
セナ対阿含、セナ止められる。自殺点だがTDよりはマシ▲ 20-16
ドラゴンフライ→一休TD▲ 70-23
セナ&モン太のウィッシュボーン破られる▲ 60-29↓の3点がトライのキックの点数間違いなのかフィールドゴールなのか不明。
キック。TD後のトライは1点なのだが何故か3点。フィールドゴール?▲ 30-32
後半。雪光初出場、速選ルートでTD+ 77-32
十文字、阿含に捕まりながらもTD+ 714-32
雲水の冷酷な判断でTDを狙わず確実にキックで3点▲ 314-3521点差で詰み、と神龍寺だけでなく泥門も認識していた
モン太対一休、モン太が競り勝ちTD+ 721-35
阿含を無視するという奇策で雲水のパスを奪う。セナ対阿含、阿含を抜き初TD+ 728-35
残り5分、ナーガはゴールデンドラゴンフライで超攻撃的に時間つぶしをする
残り1分。モン太、タイムオーバーを覆す→ヒル魔TD+ 634-35TD後のトライは↓にて。神龍寺「確実に3点取っておかなければ負けてた」
→TD後のトライでキックでなくTDを狙う。栗田が壁を崩しセナTD+ 236-35

 「確実に3点取っておかなければ負けてた」というフォローはあるものの、詰みとはどういうことなのかよくわからなかった。
 そもそも、何で神龍寺は後半ぜんぜん得点できてないのよ。


帝黒アレキサンダーズ戦
出来事得失点点数備考
モン太へのパスを鷹が空中を歩いて取り、大和が片手でTD▲ 70-7
花梨のパスを受けた大和、セナに止められるが帝王チャージでTD▲ 70-14
元・神龍寺ナーガの天間、TD▲ 70-21神龍寺に入学して3日で帝黒に移籍しておいて元神龍寺のエースもクソもないだろ。
鷹、モン太の狙いを読む。花梨のロングパスをキャッチしてTD▲ 70-28
後半開始。大和、セナを引きずったままTD▲ 70-35
天間TD、と思いきや小結がライン外に押し出していた。残り10分
鷹の読みを超えたモン太がTD。トライは栗田が壁を崩しヒル魔TDでさらに2点+ 88-35ムサシが戻る前、泥門はTD後のキックが決められず6点しか取れないと言われていた。ムサシが戻って7点取れるようになった。
しかしこの試合では毎回再TDを決め8点取っている。ムサシのキック関係ないじゃん、最初からそうしろよ。
栗田のゾーンブリッツによりセナが相手のパスを奪い、逆にTD+ 816-35
鷹のキャッチと大和のランで突き放す。キックはモン太の気迫でミス▲ 616-41
残り5分。セナ、時間を巻き戻すデビル4ディメンションで大和を抜きTD+ 824-41
ムサシのキックは雪に突き刺さる。瀧がTDするより効果的な帝黒自殺点を選んだ+ 226-41瀧TDだと9点差(逆転にTD2本必要)で帝黒ボール。自殺点だと15点差(TD2本必要なのは同じ)で泥門ボール。
ヒル魔、大和に潰される。だが見えていないパスの先には雪光がいた。雪光TD+ 834-41
何とか大和を止めるがすでにキック圏内まで運ばれていた。キックで3点▲ 334-44ヒル魔「アメフトには8秒で10ナン点ゲットできる超必殺技がある」
残り8秒。セナ、デビル4ディメンション+デビルバットゴーストで大和を抜きTD+ 842-44ヒル魔「時計なんざもう動きゃしねえよ、次の泥門のキックオフの後もな」
残り3秒。オンサイドキックはモン太が鷹を制してキャッチいや、時計動いているじゃん。
残り1秒、あと60ヤード。セナは本物のアイシールド21になった。
次はムサシが60ヤードマグナムのハッタリを本物にする番だ。
+ 345-44

 スラムダンクにも見られる全国編の弱点、敵チームとの因縁の弱さ。大和と鷹以外にも強敵はいるのだが、というか全員強敵のはずなのだが、二人以外はほとんど活躍の場がない。
 神龍寺ナーガは神奈川のチームなので東京大会では対戦がなく関東大会でようやく泥門と対戦するのだが、金剛阿含は単行本2巻ですでに登場して圧倒的な存在感を示している。それと比較すると大和は、本物のアイシールド21という謎の答えであるとはいえ、個性に乏しいと言わざるを得ない。
 そもそも、何で帝黒は後半ぜんぜん得点できてないのよ。


    日大アメフト部のアレで峨王を思い出した人が多数いたらしいが、峨王は無法な真似はしてないだろ。


 

180902 みきおとミキオ/バウバウ大臣

 みきおとミキオは藤子不二雄の作品。1974年に小学館の学年誌に掲載された。
 1973年、日テレ版ドラえもんが半年で終わる。1974年3月には学年誌でドラえもんの最終回が描かれ、本作はドラえもんに代わるかたちで始まった。しかし藤子がドラえもんを復活させたため学年誌では藤子作品が2作掲載されることになった。
 74年はドラえもんの単行本が刊行された年でもある。結局、ドラえもんの人気再燃により本作は1年足らずで終了になった。てんとう虫コミックスの裏に既刊本が列挙されている中でみきミキだけが時間が止まったように「1巻〜」となっていたのは単行本化されていないエピソードがまだ残っていたから。

 1974年の少年・みきおが、2074年の少年・ミキオと生活を交換する近未来SF。残念ながら、小学生にはちょっと派手さに欠けるのは事実だ。だが、他の藤子作品にも見られる「未来では木々や昆虫は特定の公園でしか見ることができない」「未来の人間は計算をコンピューターに任せきりで四則演算もできない」「未来の人間は体力が極端に低下しており、未来の人間が現在に来るとただの風邪でも重篤になる」といった未来像が描かれており、子供向けSFとしては十分に面白い。とはいえ、「しゃべれない設定だったペットが途中でいきなり喋れるようになる」という藤子Fの悪癖までもしっかりと含まれており、完成度は高いとは言えない。
 短命に終わったからか、未来のミキオが20世紀に来た物語が描かれていないのは残念だ。

    髪型って「そう」だったのか。


 バウバウ大臣は1976年に小学館の学年誌に掲載された。わずか半年の連載で、藤子不二雄ランドでみきおとミキオと一緒に出たのが初の単行本。藤子・F・不二雄大全集も同じ抱き合わせになっている。
 キャラはかわいくないし設定はウメ星デンカに似てるし、ボケ役ばかりで読んでいて疲れる。短命に終わるのもやむなしといった凡作だ。

    ウメ星デンカを彷彿とさせる。


 

180930 ドビンソン漂流記

 ドビンソン漂流記は『こどもの光』に1971年から掲載された。『こどもの光』は農協系の雑誌で一般書店では買うことができない。そんなマイナーな雑誌ではあるが、キテレツ大百科や藤子・F・不二雄大全集にも収録されなかった初期の作品・名犬タンタンも連載されていて、藤子不二雄の歴史を語るのに決して無視することはできない。キテレツはてんとう虫コミックスとして小学館から単行本が出たが、本作は双葉社パワァコミックスとして出た。
 そして、そのことを私は知っていた。コロコロコミックを読み始め過去の藤子作品にも手を伸ばした幼き日の私は、古本屋でパワァコミックスのドビンソン漂流記を見つけていたのを憶えている。だが、あまり可愛くないキャラの造形やてんとう虫コミックスではないレーベルに私の食指は動くことがなかった。

 藤子・F・不二雄大全集ではじめて読んだのだが、これが意外と悪くない。ウメ星デンカやバウバウ大臣とは異なりドビンソンは知能が高く、ボケばかりで疲れることはない。また、漂流者ドビンソンが両親と再会する感動の最終回も特徴だ。藤子作品、最終回がしょうもないのが多いからな。
 本作がそれなりにマシな作品になったのは、小学館の学習雑誌の連載ではないという事情が大きいのではないかと推測する。複数の『小学◯年生』に同じタイトルで対象年齢が少しずつ異なる作品を書く必要がないとか、ドラに並ぶ大ヒットは求められていないとか。キテレツ大百科も円満かどうかは別として前向きな最終回になっており、藤子と『こどもの光』は実は相性が良かったのかもしれない。

    土瓶を模したキャラ設定(耳が(土瓶でなく急須の)取手のようだったり、口を尖らせて蒸気を出したり)はかなり早いうちになくなっている。


 

181028 白暮のクロニクル

 白暮のクロニクルはゆうきまさみの作品。機動警察パトレイバーが「レイバーと呼ばれる二足歩行ロボットがいる世界の警察官」を描いた作品であるのに対し、本作は「オキナガと呼ばれる不老不死者がいる世界の厚労省職員」を描いた作品。
 生活保護不正受給など実在する問題に絡めながら、本作最大の謎・羊殺しを追っていく。構成は緻密、しかも鉄腕バーディーのように詳しすぎ長すぎといった感じは受けずいい感じ。単行本の一巻一巻が一エピソードとなっており、完成度も高い。
 だが。実に72年にわたって発生している12年に一度の連続殺人「羊殺し」、毎回クリスマスイブに発生しているのだが、それを読者に示すのがかなり遅いのだ。物語は春から始まり、主人公に「新しい羊殺しまであと半年しかない」と言わせる。その後「羊殺し」が未年の年末に発生していることが示され、秋には羊殺しを模した別人による殺人事件が発生して主人公を焦らせる。それに並行して昭和30年のクリスマスイブに発生した殺人事件と昭和18年のクリスマスイブに発生した殺人事件が描かれる。そしてとうとう、今年のクリスマスイブにも羊殺しがおこなわれようとしており、ここでようやく上役に「羊殺しは24日の深夜から25日未明にかけて行われる」と言わせている。
 その事実、もっと早く明言されるべきじゃないかな、と。
 そんな細かいところが気になる程度に面白かった。

    ゆうきまさみ名物、魅力的な中年男性。


 

181216 今日から俺は!!

 今日から俺は!!は1990年代にサンデーで連載されていた漫画。当時はヤンキー漫画が嫌いでスルーしていた。2018年になってなぜか80年代風アレンジがされ実写ドラマ化され、これまたなぜか評判がいい。見てないけど。
 ドラマはともかく原作漫画は評価が高いことだけは知っていたので、これを機に読んでみた。ドラマ化のおかげでいろいろなところで電子書籍が無料になっているのだ。最初のほうだけだけど。

 だが。大人になってカメレオンやエンジェル伝説は楽しめるようになったが、相変わらずこいつはダメだった。
 人気なのはわかる。トムとジェリーのように互いにケンカすることもあるが協力して共通の敵に挑む友情物語。三橋貴志と伊藤真司は桜木花道と流川楓以上にいいコンビだ。
 しかし、そもそも、ヒキョーな三橋はともかく正義感あふれる伊藤が高校転校を機にツッパリになった理由がわからない。三橋だってその強さがどこから来ているのかわからない。先の巻で描かれているのかもしれないけど、とにかくモヤモヤする。
 まあ、ドラえもんだって「セワシの運命を好転させるためのび太を鍛え上げる」という当初の目的を忘れていろいろ馬鹿やってるわけだし、最初の設定にこだわりすぎるのはよくないのかもしれない。
 適当にググって見つけたサイトでも「もし最初の数巻で読むのをやめた人がいたら間違いなく損してるから注意」と書いてあった。もしかしたら自分、損してるのかも。

    第1話。黒歴史になっているのかも。


 
190127 エンジェル伝説

 エンジェル伝説は月刊ジャンプに掲載されていた作品。いつどこでこれを知ったのかは覚えていない。月ジャンなんて全然読んでないし。大学のサークル長屋のどこかにあったか、就職後にインターネットで話題になったのを目にしたか。
 今日から俺は!!とは違い、ヤンキー漫画ではあるが楽しむことができた。主人公が善人で読後感が良好なためだろう…と思ったのだが、それではカメレオンを肯定できている理由にならない。今度はカメレオンを読まなくては。

    小磯良平・白瀧幾之助の名を知っていれば郁子の元ネタが平山郁夫だとわかるという仕組み。

 そうそう、月ジャンで思い出したのだが、小学生のとき、誕生会かクリスマス会の準備のために何人かのクラスメイトと共に女の子の家にお邪魔したことがある。そこで見た月ジャンが強烈に記憶に残っている。そこで掲載されていたのはまぼろしパンティだったのだ。


 

190303 どろろ

 どろろは手塚治虫の作品。妖怪ブームにあやかって作り上げたキワモノと手塚自身が語っており、陰鬱な内容で人気が低迷し物語は完結しないまま終了したが、内包されたテーマに気づいた大人からの評価は高い。
 2019年のアニメはまだ見る機会がない。
 PS2で出たゲームが原作の設定とゲームの設定がうまく結びついており、いつかプレイしてみたいと思っていたのだが叶わずじまいだった。いや、アニメ同様、今後プレイする機会があるかも。PC-88版も。

    我が子を生贄として48の魔神に捧げた男・醍醐景光。ウィキペディアによると加賀の守護大名・富樫政親の家臣とのこと。


 

190331 カメレオン

 カメレオンはマガジンに掲載されていた作品。当時のマガジンは湘南純愛組!とか特攻の拓とかヤンキー漫画がたくさんあったっけなあ。リアルタイムではどれも読んでないけど。
 就職後、ラーメン屋で単行本を見つけたので読んでみたのが最初。そしたらあまりの馬鹿らしさに止まらなくなってしまい、毎週そのラーメン屋に通うことになった。そして、これを楽しめるようになったことに、自分が大人になったことを実感したのだった。

    憶えていた数少ないシーンの一つ。すでに就職しており、自分も安全靴を履いていたので記憶に残ったのだろう。


 

190609 ジゴロ次五郎

 2018年。爪先を守る安全靴だけでなく甲プロテクタの着用も義務付けられた仕事についた。入社当時とは違い工場でも女性が多く働いており、その職場にも茶髪の若い女性がいた。フォークリフトを見事に乗り回す彼女、休憩時間に仲間と話しているのを聞いたのだが、なんと既婚者でダンナがジゴロ次五郎が好きとのこと。自動車メーカーでフォークリフトを運転するヤンキーな既婚ギャル。そういう世界って、本当にあるんだな。
 ジゴロ次五郎はカメレオンの作者によるヤンキークルマ漫画。あらためて読んで気づいたのだが、ほとんどすべて憶えていた。マガジンに連載されていたのは2002年からとのことなので、ジャンプマガジンサンデーが置いてある喫茶店に毎週通っていた頃に読んだのか、漫画喫茶でまとめて読んだか。別に自動車メーカー勤務だから義務的にというわけではなく、楽しんで読んだのは確かだ。

    風圧にオッパイを感じるというよくあるネタだが、想像以上のオチをつけてきた。このシーンで作者に感服したのを憶えている。


 

190630 原作者クメタ

 さよなら絶望先生のアニメが終わって数年後にじょしらくというアニメが始まった。原作、久米田康治。ただし企画先行型で、タイトルはもちろん落語漫画というスタイルそのものが編集者のアイデアによるもの。作画担当にヤスを決めたのもこの担当らしい。
 作画のヤスという人は有名所ではラノベ『とらドラ!』のイラストやシリーズ中できわめて評価の低いゲーム『リサと一緒に大陸横断 〜A列車で行こう〜』のイラストを手がけている絵描きさん。ウィキペディアによると4コマでない連載マンガははじめてのようだ。
 それの原作漫画を見る機会があったのだが、まあつまんないの何のって(アニメが特別面白かったという記憶もないけど)。小ネタが売りの久米田康治を原作とする、部屋の中でのみ展開される物語。どう考えても作画に求められるのは萌え系の絵ではない。これは企画が悪い。

    月の兎が諸外国では別のものに見えるという話。ドン引きするような内容でもないのになんでこんな表情してんの。


 なんくる姉さんもこのコンビによる作品。密室劇ではなく普通の漫画になった。ネタとしては沖縄しばりで、よく5巻まで続けることができたなと感心する。
 さすがに下品なネタはないが、あるあるネタあり時事ネタありちょっとエッチなネタあり、終盤では読者を驚かす世界観の説明ありといかにも久米田康治的な作品だった。最後が特に重要で、かってに改蔵や絶望先生の最終回を彷彿とさせる、だがネガティブさのない心地よい驚きだった。
 とはいえ、作画がヤスである必要はない。

    チューバーという沖縄語を知らなかったので先にオチが思いついてしまった。オッサンだなあ。


 大学時代、新人漫画家久米田康治に駄目出ししたのも懐かしい思い出。行け!!南国アイスホッケー部から始まる一連の作品を読み直したくなった。いや、若い頃の過ちには触れないでいてやるのが武士の情けというものか。


 

190728 目玉焼きの黄身 いつつぶす?

 2014年、NHKで唐突にアニメが始まった。おおひなたごうの漫画、目玉焼きの黄身 いつつぶす?
 以前からおおひなたごうのギャグの手法は評価していた。と思っていたのだが、ウィキペディアで調べると知っている作品は一つもなかった。あれ? 誰と勘違いしてたんだ?

 勘違いから始まった注目だが、結論としては正しかった。このギャグ手法、只者ではない。放心状態で「塗り絵」状態になったり逆立ち状態のキャラの台詞が上下逆になっていたりと漫画作品であることを最大限に利用している。また、シリアルな場面で、作者自身がその空気の重さに耐えられなくなったかのように突然ギャグを挟むこともある。まるで手塚治虫のヒョウタンツギのように。
 感動の最終回の最後のコマも、感動を台無しにされたと思う人がいないとも限らないことを否定できないようなギャグで締められている。


熱弁を振るうキャラの口の中に、

口内炎。

 とはいえ、本作の魅力はそれ以外のところにあった。
 職場の仲間、友人、恋人。仕事とは別の挑戦。挫折と立ち直り。恋人と破局中におかしてしまった過ち。大人漫画でこれほどまでに主人公の人間関係を羨ましいと思ったものはない。特に最後。


 

190915 三億円事件奇譚 モンタージュ

 ヤング ブラック・ジャックが昭和40年代を描いていた頃、三億円事件を扱ったもう一つの漫画作品があることを知った。それがこれ、三億円事件奇譚 モンタージュ
 面白いのは面白い。が、綿密に仕組まれた、言い方を変えれば決められたレールの上を走っている印象が強く、うおぉぉぉ、この先どうなってしまうんだ!的な興奮はなかった。犯罪もの・推理ものは難しいな。
 そういえば岩倉具視の500円札、最後に使ったのはいつのことだろ。

  

 

191019 月の子

 父がときどき買っていた雑誌・週刊宝石には定番の処女探しのほか漫画の単行本を紹介するコーナーがあった。その中で記憶にあるのが清水玲子の月の子 MOON CHILD。紹介文の中で「まだ2巻までしか出ていない」と書かれていたのを憶えているので1989年のことだと思う。白泉社のLaLaで連載されており、レーベルは花とゆめコミックス。ちょうどぼくの地球を守ってピグマリオスケバン刑事を妹が友人から借りてきたのを読んでいた時期でもあり、私は猛烈にこの作品が読みたくなった。実際にこの本を手にしたのは就職後、漫画喫茶でのことだけど。


 愛する人のためには世界の破滅をも厭わない者がいた。彼はいくつかの未来を予知し、邪魔者を排除するために脚色したうえで関係者に夢として見せた。

  1985年9月 メキシコ地震
  1985年11月 コロンビア ネバドデルルイス火山の噴火
  1986年1月 スペースシャトル チャレンジャー号爆発事故
  1986年2月 スウェーデン オロフ・パルメ首相暗殺
  1986年4月15日 アメリカによるリビア空爆

 次第に間隔が短くなっていく重大事件。
 この星にとって致命的となる次の大災害は、予知ではなく彼自身が起こそうとしていた。ソ連(当時)・キエフの近くにあるチェルノブイリ原子力発電所で。

  「チェルノブイリ」が聖書に書かれていたという都市伝説、ネットのない当時に知っていたら大いにハマっていたかも。

 しかし奇跡が起き、1986年4月26日にチェルノブイリ原発で爆発は起こらなかった。
 その後も歴史は積み重ねられる。ハッピーエンドの中で列挙されているだけだけど。

  1987年 米ソ首脳会談でSDI全廃条約調印
  1988年 ソビエトと日本、原子力にかわるエネルギーを月で発見
  1989年 中華人民共和国 民主化
  1990年 宇宙ステーション完成
  1991年 クーデターによりフセイン失脚
  1992年 人類、火星に降り立つ
  1992年 チェルノブイリ原発、新エネルギーとの世代交代で無事故のまま閉鎖

 作中では1992年(連載終了時点の現在)の登場人物が、チェルノブイリが爆発してしまったもう一つの未来を夢で見ている。

  1989年 天安門事件(「中国民主化」との対比ですな)
  1991年 湾岸戦争(「フセイン失脚」との対比ですな)
  1992年 ロス暴動
  1992年? 南極のオゾンホール観測史上最大に

 現実を悪夢扱いする恐ろしいオチ。「そうだこれは夢なんだ」のAAを思い出す。


 

191117 三つ目がとおる

 三つ目がとおるは手塚治虫の作品。TVアニメは手塚の死後、1990年から1991年にかけてテレビ東京系で放映された。主題歌は憶えているのでそれなりに見ていたのだろう。
 また、全巻ではないが手塚治虫漫画全集版を読んだことがある。古本で買ったか、献血ルームで読んだか、詳しいことは憶えていない。

 主人公コンビが写楽と和登サンなのはシャーロック・ホームズとワトソンに由来し、当初は推理モノを目指していたらしい。正直なところ、何でもかんでも三つ目族の遺構にしてしまいやたらと冗長な長編よりもヒバゴンや自然にできたきれいな球の謎を解く短編のほうが面白い。藤子F的、と言ったら当のF先生から「自分が手塚先生の影響を受けているんだ」と抗議されそうではあるが。
 また、和登サンはボクっ娘の元祖として評価が高い。

    この後女の子のオッパイを突っつく。男子中学生の馬鹿っぽさがよく現れている名シーン。
で。
 これを読んで以来行ってみたいところがあった。イースター島…はまあ行ってみたいことには変わりはないがより実現性の高い場所として奈良飛鳥地方に。
 そして、新車を買ってドライブに行きたくなって、ようやく訪れることができたわけだ。

 2019年、オトナの修学旅行に続く


 

200209 ぼくの地球を守って

 ぼくの地球を守っては私の青春にどストライクな作品だった。
 妹が友人から花とゆめコミックスを借りてきたのが最初の出会い。弓道部の友人が部の中で流行っていると言ってきて、俺も読んでるぜと盛り上がったこともあった。その一方で、親しい女の子とこの作品について語り合った記憶はない。高2か高3か、部活動に熱心に参加しなくなったころに流行りだしたのだろう。
 大学に進学したら、yone氏だったか他の友人だったか忘れたが、やはりこの作品が話題に上ったものだ。また、ワタナベの影響で別冊宝島をよく読んでいたのだが、『いまどきの神サマ』という本の中で前世ブームやオウム真理教と並んで本作についても言及されていて驚いたということもあった。
 コミックス最終巻が出たのは1994年。すでに妹も短大に進学して家を出ており、そちらのルートで読むことができないので漫画喫茶で読んだ。
 就職後、県内の少し遠いところでおこなわれた同僚の結婚式に出席するにあたり、道中の漫画喫茶で時間を調整した。そのときに読んだのは作者の次の作品・未来のうてなだった。ここで疲れてしまい、ぼく地球の続編に手を出してはいない。あらためて読んだところで高校大学時代のように語り合える友人はいないからな。


全裸事件について、紫苑の回想と木蓮の回想。こういう多面的な描写、大好きだ。


 

200405 ドラえもん

 Twitterのボットで名言を語らせるにあたりあらためて読んだが、やはりドラえもんは面白い。何度も読み返し一言一句憶えているお話もあるし、ほとんど記憶になく新鮮な気持ちで楽しむことができたお話も少なくない。後期のドラは未来の想い出で調子に乗った納戸理人が語ったようにチョチョチョッとパターン化して描いているものも無くはない。だが、それらも含めて藤子・F・不二雄のドラえもんなのだ。スタンドバイミーのように感動するお話だけを寄せ集めて一本の長編にするのは断じて違う。

    覚えたい覚えたいと思いながらも結局覚えることができなかった階級ワッペン。


 

200524 からくりサーカス

 からくりサーカスうしおとらが終わった翌年に始まった。コミックス全43巻、200年以上に及ぶ大長編。

 「笑うべきだとわかった時は泣くべきじゃない」という台詞が名言としてよく挙げられるが、これ、いい言葉か? 禅の言葉らしいが、本当か?
 「泣くべきじゃない」という曖昧な状態を指示するのは好ましくないだろう。泣くべきでないなら、しかめっ面していればいいのか? アホ面晒していればいいいのか? そうじゃないだろう。笑うべきだとわかった時は「泣くべきじゃない」ではなく、「笑うべき」なんだ。
 と、細かいところが気になってしまうが傑作であることに変わりはない。アニメは見る機会がなかった。TVerとかで配信してくれればよかったのに。

    それで? と言いたくなる。


 

200614 企業戦士YAMAZAKI

 小学6年生の頃。キン肉マンで夢の超人タッグ編が終わってキン肉星王位争奪編がはじまったのと同時に週刊少年ジャンプを買い始めた。小遣いが厳しいので長続きはしなかったが、その間に始まったある作品が記憶に残っている。ポップな絵柄で女の子がかわいい、富沢順のガクエン情報部H.I.P.だ。あと海人ゴンズイ(トラウマになっている人多し)とかすもも(脱衣勝負で乳首を絆創膏で隠すシーンが新たな性癖を呼び覚ました)とか。
 年月は流れ、アキヒト少年は大学生になった。ツチノコ旅行の際に八代氏が買ったのを読ませてもらったスーパージャンプに富沢順の作品が載っていた。それが企業戦士YAMAZAKIだった。

 熱い名言や時代を先取りした新製品で今でもウェブ上で語られることがある。
 話としては「水戸黄門だってもっとバリエーションあるだろうよ」と言いたくなるほどの完全ワンパターンなので、データベース化してhtmlを吐き出すExcelマクロを作ったものだ。アウトプットによると2013年のことだが、すっかり忘れていた。

    DB化したため「セラムンをパロった技を出した回」も即座に見つけ出すことができる。

 ライバル企業戦士が芸能人の誰をモデルにしているかとかヤマザキの必殺技がどんな特撮やゲームを元ネタにしているかとかをこの期に及んで詳細に書いても仕方がないので、ここでは各エピソードで登場した、ヤマザキが提案した新製品について紹介しよう。以前作ったマクロを改造して。
 この作品を読み返すと、時代の変化と私自身の変化を実感せずにはいられない。主に悪い意味で。

#タイトル業種提案アイデア概要
BUSINESS 1コンビニエンス・ウォーズコンビニエンスストアワイワイマートの2号店
『ワイワイCAMPUS』
スナック菓子とインスタントフードの専門店。通常のコンビニの限られた空間ではフォローできない新製品をすべて揃え、女性や若者に強烈にアピールする。
BUSINESS 2空中庭園デパートスカイパークデパートの屋上を全天候型公園にし、子供と主婦の解放区とする。公園の一角にテレビ電話を設置しすべての売り場の商品を買えるようにする。不況の中でも順調な通信販売と同様、気軽に買えることが売り。
BUSINESS 3LONG DISTANCE CALL電機メーカーテレトークシステムコードレス、ハンズフリーときて、次に消えるべきは電話機そのもの。パネル型本体を壁に貼り付け、拍手にて起動、ダイヤルは音声入力。
BUSINESS 4イミテーション食品メーカーカップ麺
『ラブ&ピース』
消費者は必ずしも中華麺を食べたいわけではなくカップラーメンという不思議な料理を楽しみたい要素が強い。原料を変え、栄養面での差別化をはかる。さらに本物らしさと遊び心を両立させる。
BUSINESS 5Restructing光学機器メーカー使いきりビデオカメラ
『テンミニッツ』
コンビニで手軽に買えるビデオカメラ。撮影専用、ズームなし、10分間の8mmテープ込みで3,500円。市販テープを入れ再利用可能だが使用済機をリサイクルしてキャッシュバックもする。
BUSINESS 6Tears & Reasonsファミリーレストラン『ニコニコおにぎり』ファミレスでテイクアウトのおにぎり店頭販売。食材は店内にいくらでもある。コンセプト強調のために弁当箱持参を原則とする。全国展開したファミレスを地域に密着させる意図もある。
BUSINESS 7眠れる獅子電化製品メーカー自動仮眠装置
『スリーピングライオン』
15分の仮眠で仕事の効果が格段にアップする。アイマスク部にランプがあるほかスピーカーや小型バイブレーターを内蔵し短時間の睡眠を補助。20分後に一気に目覚めさせる。
BUSINESS 8明日の箱テーマパーク人生相談アトラクション『トゥモロー・ボックス』人生に唯一無二の答えなど存在するワケがない。コンピュータが出した答えをネタに相談者と仲介者、見知らぬ若者同士が話し合って自分なりの答えを出す。
BUSINESS 9DIRECTION−演出テレビ局ドキュメンタリー番組
『NEW STYLE WARS』
新製品を通じて新たなる価値観を生み出そうとする人々の試行錯誤の努力の過程を紹介する番組で”夢”という未来型の情報を提供する。現在進行形のサクセスストーリー。
BUSINESS 10魔法使いAV機器メーカー情報ストック型テレビ
『タイム・マシーン』
全チャンネルの全番組を72時間分記録しつづける。記憶媒体はMO。作中ではパネル型大型液晶TVの商品化は当分先と言われておりワイド画面やハイビジョンは主力商品になるわけがないと断言されている(のちに作者も買ったけど)
BUSINESS 11MY FAIR LADY菓子メーカー総合機能性菓子
『マクノウッチー』等
ターゲットはすべての現代人。外観は弁当や寿司のミニチュアで成分はあらゆる栄養素の集合体。ビタミン・ミネラル類の1日分の必要量をすべて摂取できる。他に口内殺菌作用を持つガム、DHA入りシーフードチップスなども。
BUSINESS 12A Thousand Needles−針千本スーパーマーケットチラシをカタログとした
テレフォンショッピング
主婦が家事の中で減らしたいものは料理に次いで買物が高い。入会金5000円、一回注文合計金額3000円以上。ただしPB商品を増やさないと利益は出ないので売る側の汗も最大限に要求される。
BUSINESS 13ストイック外食向け食品メーカー冷凍食品
『愛芯棒バンザイ』
野菜ペーストをスティック状に凍らせチャック付きの冷凍パックに入れる。全10種類、1本200円。旬に取れた有機野菜を冷凍加工すれば促成栽培の野菜より栄養価が高くなる。
BUSINESS 14PAST FUTURE−過ぎ去りし未来出版社高齢者向け
シルバースクール講座
高齢者だからこそ学びたい要求は強い。かつて自分が何を学び何を感じてきたかを再認識する場を提供する。内装は昔の学校で、各科目のほかホームルームや給食もある。
BUSINESS 15LADY TIGER製薬会社レディースクリニック薬を飲みたがっている人間などいない。セラピー・マッサージ・食生活チェックによって心理面・身体面・栄養面からのリラックス・充実をはかる。のちにパートナーにより第4の柱・科学を追加。毛髪分析で健康チェックをする。これは従来の栄養剤の売上にも貢献できる。
BUSINESS 16パラドックスドリンクメーカーコーヒーハウス『KING'S』
+燃やせる缶
今こそ人々が欲しているのは一人だけになれる静かな空間。セルフサービスの喫茶店でビジネスマンに憩いの場を提供しブランド定着、さらに燃やしても有毒ガスが発生しない缶で空き缶公害対策。
BUSINESS 17MYSELFミシンメーカーディレクターミシン
『MYSELF』
型紙をスキャンするとパーツを記憶。ローラーで布を動かし、裁ちやかがりも自動でおこなう。難度の高いソーイングは無理だが、初心者向け機なのでこれでよい。ターゲットは女子高生と若夫婦。
BUSINESS 18MARATHON-MAN携帯通信会社電子新聞
『ニュースボックス』
業務連絡用ツールだったポケベルが個人用になって、次の進化は「社会と人の連帯」。ジャンル別にその日の30大ニュースをポケベルに送信する。画面は新聞と同じく一行12文字で左から右に流れていく。
BUSINESS 19SURVIVORハンバーガーチェーンハンバーガー店の
バイキング方式への転換
食生活の自己管理という要素を取り入れた日本流ファストフードで不健康なイメージを一層。中高年サラリーマンの弁当代わりにもなり、遊び気分でハンバーガーを作れるため子供にもウケる。価格は重量による量り売り。
BUSINESS 20MY HOME TOWN自動車部品メーカー自動人体洗浄機
『バスソニック』
浄水器を内蔵した機能部と超音波発射ノズルがあり、洗いとマッサージをおこなう。依頼元の一社では無理だが下請企業が提携することで実現可能。系列依存から脱却を目指さねば日本の下請け企業は壊滅する。
BUSINESS 21仮想現実玩具メーカーペットのレンタルサービス玩具メーカーの難しさは本来の客は子供だが買うのは大人である親だということ。親と子が共有できる価値観である命で情操教育する。1時間2千円、1回のレンタルで最高5時間。
BUSINESS 22BIG TOMORROWオーディオメーカーカードカメラMDを内蔵し約1cmと薄くできた。作中でFDを使った既製品に触れており、デジカメでなく電子カメラに相当する。液晶画面がありその場で確認できる。別売りプリンターで印刷可能。雑誌掲載は1994年7月頃。なお、世界で最初に液晶画面が搭載されたデジカメはカシオのQV-10で同年11月発表。FDを記憶媒体としたソニーの奴は1997年7月。
BUSINESS 23FAMILY SITUATIONスーパーマーケットママの休日
『サンデーママプラン』
主婦が求めているものは時間、そして友人。キッズルームで子供を預かり主婦に休日を提供する。相互扶助システムで別の日にはヘルパーとして働く。またPB商品のモニターも兼ねていただき、一石二鳥。
BUSINESS 24A LONG & WINDING ROAD大手電機メーカーの子会社文庫本音読機能付きCDラジカセ『オートリーダー』文庫本をセットするとローラーで自動的にページをめくりスキャンする。単機能製品ではなくラジカセと複合させるのはダビングして外出時に使うため。日本語識別や流暢な合成音声はこれからだが、他社の協力を取り付けた。
BUSINESS 25ONE WAY TICKETAV機器メーカーセパレートタイプの
デジタルコンパクトカセット
旧来のカセットテープとの互換性ゆえ小型化が難しいDCCだが、巻き取ったリール部分を分割してMDより小さくする。MDに勝つにはMDの74分を超える大容量を必要とし、薄型テープの開発が必須。
BUSINESS 26MY SUGAR BABE菓子メーカー『スイートボール』
商品名はパートナーによってより適切なものに変更される
スポンジの中にフルーツを入れて焼いたものに生クリームを注入したインケーキ。ケーキより持ち運びが楽で一度にいろいろな味が楽しめ、皿に移す必要もない。中身をチーズやチキンにすればファストフードにも対抗できる。
BUSINESS 27LOVE ME TENDER文具メーカーアロマ文具文具にエッセンシャルオイルを含有させ精神安定機能を持たせる。ペンや消しゴムのほか、水溶性カプセルをすき込んだメモ帳もある。これは水に溶かすと香りが10分持続する。
BUSINESS 28遠・隔・操・作住宅設備メーカー汎用リモコンを超える
『ボイスリモコン』
音声指示で各機器に指令を出す。光ファイバーの中継機で赤外線でも部屋の外に飛ばせるようにする(電波では誤動作の恐れがあるため)。これによりリモコン洗濯機、リモコン換気扇など主婦による家電の集中管理ができるようになる。
BUSINESS 29コンビニエンス・ウォーズIIコンビニエンスストア『弁当名人』コンビニの客層は多様だが弁当は若い男性にしか売れていない。そこで女性をターゲットとした弁当を出す。美観を重視し箱には原材料名や栄養バランス表を明記。賞味期限は8時間で朝昼夕方の時間限定販売。
BUSINESS 30HAND IN HAND家電メーカー瞬間冷凍機能付電子レンジまとめ買いをする消費者が増え、大型冷蔵庫の需要が伸びた。次に電子レンジに要求されるのはホームフリージングの-40℃を超える-120℃で瞬間凍結する機能。
BUSINESS 31MIND SCREENフィルムメーカー写真に音声をプラスする
『写音機』
専用磁気テープを写真の裏に貼り、写音機のスリットにセットすると音声を再生する。写真だけでなくメッセージカードやメモやハガキにも使える新しいコミュニケーショングッズとなる。
BUSINESS 32A Girl Meets A Lady健康食品メーカー余剰分除去食品健康のため塩分や脂肪分を控えろと言われても現実的には難しい。そこで余剰分を排出する機能を凝縮したサプリを出す。健康食品としてだけでなく他社と業務提携し塩分の心配がない味噌なども作れる。
BUSINESS 33ENDLESS SUMMERデパート空中農園計画野菜工場で無農薬・病害虫なしの野菜を提供する。現段階では研究段階で生産量も少ないが、百貨店の屋上に野菜工場を設置し地下の売り場へ直送・販売すればよい。
BUSINESS 34REVOLUTION洗剤メーカー次世代洗剤石鹸の無害性と合成洗剤の利便性を兼ね備えた次世代洗剤。グラニュー糖を減量にした界面活性剤・シュガー脂肪酸エステルを使った完全無害な洗剤。湿気に弱いが密封してスプレー式にすることで解決。
BUSINESS 35RAIN & PAIN化学素材メーカー人工木材(生分解性木質プラスチック)セルロース(古紙から)・ポリエチレンテレフタレート繊維(PETボトルから)等の廃材を原料とした究極のリサイクル素材。原料の配合次第で強度が変えられ用途は無限。
BUSINESS 36ワタシの青い鳥時計メーカーストレス度測定機能付ウォッチ『"S"ウォッチャー』ベルト部分で血圧測定、センサーに指先を当てて脈拍測定。質問に答えたり反射スピードの測定もする。これらによってストレス度がグラフ表示される。
BUSINESS 37LOVERS & LIVES学習塾QOLスクール古来、人は子供時代に遊びを通して人間関係の大切さ・難しさを学び自分の適性を見極めてきた。そこで伝統遊戯、クッキング、アウトドアなど古今東西の遊びをその道の達人に学ぶ。
BUSINESS 38復讐者ホテル豪邸ホテル豪邸といってもゼロから建てるわけではない。バブルが弾け買い手のつかない豪邸を借り上げて客に貸す。住宅メーカーや家電メーカーのショールーム・モニタリングも兼ねる。
BUSINESS 39やさしさ INFLATION化粧品メーカー栄養ゼリー剤
『RIKO STICK』
化粧品メーカーがその企業イメージを武器として激戦の栄養ドリンクに参入する。従来の栄養ドリンクは中高年男性向けだが本製品は女性向けで、中学生や小学生にも購買層を拡大できる。
BUSINESS 40JUSTICE食品包装用フィルムメーカータイムチップ付包装材賞味期限は明記されるようになったが開封前の話であって開封後の期限はあまり知られていない。目盛毎に濃度を変えた空気酸化剤を塗布してあり時間経過が的確に表示される。
BUSINESS 41TOP SECRET家電メーカーパーソナルシアターシステム(PTS)今で言うHMD。ゴーグル内に2.5インチTFTカラー液晶ディスプレイがあり、偏光レンズの焦点調節により大迫力の表示が可能。2.5インチで2000万画素を出す技術はこの企業が開発していた。
BUSINESS 42THE WAY OF THE DRAGONトイレタリーメーカー残留農薬検出スプレー『サラダの国からきたスプレー』試薬が有機塩素農薬に反応し変色する。水洗いすれば残留農薬とも洗い流せる。表皮でなくクチクラ層に浸透した農薬への対処は今後の課題。
BUSINESS 43OPEN THE WINDOW照明メーカー電子ウインドウ窓枠付きの発光パネル。風景写真を入れると本物の窓のように見える。電池内蔵で時刻により光が変化する。安価に立体感を出すためにレンチキュラーレンズを採用(パートナーによる発案)。
BUSINESS 44MEMORIES電子文具メーカーデジタルポケット
通称『デジポケ』
デジカメ内蔵で大切な人の記録を保存する。デジタル時計・電子手帳・デジカメのおいしいとこ取り。中高生にニーズがあるが価格がネック。超低価格のフラッシュメモリを開発するか、電池切れで記録が消えるDRAMで良しとするか。
BUSINESS 45魔法の靴靴メーカー反射帯療法シューズ
『リラックツ』
中敷に電極を配し足の裏へ低周波パスルを送る。強度調節や刺激するツボの選別は手元のコントローラーでおこなう。肩や腰に貼り付けるタイプと違ってオフィスで仕事中にも使える。
BUSINESS 46"POISON"防犯システム機器メーカー携帯用磁場感知カード
『マグナルくん』
電化製品からの電磁波を見える化する。パソコンの中には輸出のため欧州規制値をクリアするようシールドしているものもある。これからの消費者はより安全な製品を選択することが重要。
BUSINESS 47TAKE ME HIGHER中堅寝具メーカー『SHEEP'S HOUSE』オフィス街に昼寝の場所を低料金で提供する。寝具を提供すると旅館扱いになるので個室にはウレタンマットとタオルと電気スタンドのみ。回数券をコンビニやタバコの自販機で販売する。
BUSINESS 48MY LOVE同上続きものなので無し
BUSINESS 49SOMEBODY'S NIGHT玩具メーカー夢判断ゲーム機
『Dr.夢子』
いくつかの質問に答え自分の心理状態を分析してもらう。根拠も聞くことができる。見た夢を忘れないためのボイスメモ内蔵。夢分析のプログラムは恋愛ゲームの評価が高いゲームソフトメーカーに外注。
BUSINESS 50IRON MANファミリーレストラン出張料理人派遣サービス
『フレンドシェフ』
採算割れの店舗をセントラルキッチンとして仕込みをおこない、客先に食料持参で駆けつけそこのキッチンでフルコースの料理を作り上げる。無店舗営業なら通常より安く提供できる。
BUSINESS 51シンデレラ'97デパートバーチャル試着
『シンデレラサービス』
試着室の壁にスキャナーが仕込んであり体型を3Dスキャンする。服は画面上で合成され、自由にコーディネート可能。CGを印刷することでプリクラ感覚で体型チェックや着せ替え遊びもできる(パートナーによる発案)。
BUSINESS 52THE LAST MAN STANDING飲料メーカー茶葉タブレット
『粗茶でございます』
茶の中には茶ガラとして捨てられる栄養素も多く、昔は抹茶として飲んでいた。茶葉を粉末状に砕きミントや甘味料を加えたタブレットは日本人好みの味で栄養満点。12粒がお茶一杯分の茶葉に相当する。
BUSINESS 53KICK OFF家電メーカー自転車用汎用アシストモーター『チャリスター』手持ちの自転車に取り付け電動アシスト自転車にすることができる。ヤマザキ提案時は汎用といえるほどの応用性はまだなかったが、技術部が構造を簡略化したところスパナ1本でどんな車種でも10分で付けられるようになった。
BUSINESS 54WHO ARE YOU?機械部品メーカー超音波歯みがき機『US(ウルトラソニック)ピック』B2B企業が一般消費者向け製品として得意の超音波洗浄で斬り込みをかける。口に水を含みピックを加えて10秒、それだけで歯の隅々までピッカピカ。刺激は炭酸飲料より少なく、歯磨き粉も不要。
BUSINESS 55ADULT CONDITION洋酒の輸入販売サンプルワイン販売機
『ワイン党大会』
50mlのミニチュアボトルが出てくるワインのガチャガチャ。カプセルには産地や醸造方法が書かれた説明書も入っている。遊び感覚で世界中のワインを試飲して本当の自分好みの味を見つけてもらう。
BUSINESS 56HOT LINEPHSメーカーパーソナルリストフォン
『ガーディアン』
GPS内蔵で、同機種同士ならば相手との距離がわかり声だけのコミュニケーションに深みが増す。またSOS発信機能もあり警備会社に連絡が届く。
BUSINESS 57こころ景色通信教育卓上ガーデニングキットミニチュアの庭造りをおこない、インターネットや郵送で会社に送る。するとゼミの通信添削の要領でプロのガーデンデザイナーや臨床心理士からアドバイスをもらうことができる。
BUSINESS 58DISCOMMUNICATIONカレー専門メーカーカレーと別料理を組み合わせた邪道メニュー『JADO』B級グルメ嗜好や栄養バランス意識、遊び心や冒険心まで考えられている。問題は、カレーにこだわりを持つ創業社長に反対するだけの熱意を持つ者がいるかどうか。
BUSINESS 59KISS IN THE DARK医療機器メーカー空気汚染計
『エアウォッチャー』
合成化学物質の汚染度を測定、許容量を超えるとアラームが鳴る。許容量はユーザーが決める。体調やそこにいる時間など、自分の許容範囲は自分で決めるしかない。
BUSINESS 60DEAD or ALIVEバッテリーメーカーネクタイ型ポリマー二次電池
『バッテリータイ』
中にポリマーリチウムイオン二次電池が入っており、通常のネクタイより多少厚い程度。製品コンセプト的に勤務時間中フルにノートパソコンが使えるほどの容量が求められるが実現できたかどうかは不明。
BUSINESS 61LOVE WARS液晶製品メーカー45型カラー液晶
ルーペビジョン
薄型液晶ディスプレイは20型が限界と言われていた時代にドットピッチを三分の一にした15型液晶TVを光ファイバールーペで拡大。プラズマディスプレイと同等のところまではできたが、さらに薄さ5cmを目指す。
BUSINESS 62存在証明同上続きものなので無し
BUSINESS 63ヤマアラシのジレンマ便器メーカー体調監視機能付き便器
『メディカレット』
便器内に多目的センサーを内蔵、リモコンパネルに検査結果が表示される。6人分のデータを30日間記憶し、個別の基準値を自動で割り出す。アドバイス機能付き。
BUSINESS 64肖像'98ゲームメーカーフィギュア職人
『似太郎くん』
プリクラとフィギュアと街の似顔絵描きの合体。オプションパーツを充実させることでリピート率を確保。施設や名所などで限定版のホルダーを設定すればゲームセンターに限らず世界中に設置できる(パートナーによる発想)。
BUSINESS 65THE BIG MAMAビールメーカーフリーズドライしたビール
『タブレットビール』
真空中で凍結乾燥したビールに炭酸ソーダを加えタブレットに加工。アルコールは飛ばないようパウダー化している。輸送コストカットかつゴミ問題への対策にもなる。反対派はペットボトルのビールを提案しようとしている。
BUSINESS 66REASON FOR BEINGデパート”時間”売り場露天風呂を模した大浴場や休憩室で自由にリフレッシュしてもらう。利用客には当日限り有効の割引チケットをプレゼント。これにパートナーが発案した全館散歩道計画を合体させればデパートはショッピングパークに生まれ変わる。
BUSINESS 67SLEEPLESS CITYカラオケボックス総合メンタルケアボックスカラオケによるストレス発散にテレビ電話によるカウンセリングをプラスし、多角的にストレスに取り組む。カラオケボックス内でのカウンセリングなら誰もが気軽に立ち寄れる。
BUSINESS 68INTERFACE総合電機メーカーパネル型デスクトップPC
『スマートブレイン』
薄いキーマットやマウスアイによる視線入力で設置スペース問題をクリア。入出力すわなちパソコンとユーザーの対話をいかにスマートにおこなうかが本製品のテーマ。
BUSINESS 69BRAND-NEW DAYS家電メーカー生活チェックマシン
『生活王』
万歩計をベースとしたエネルギー収支計測ツール。おすすめメニューを表示したりセンサーで体脂肪率を測定できたりもする。ゲーム感覚で生活の中に無理なく溶け込むニューライフ提案型家電。
BUSINESS 70PROMISED LAND大手商社バイタルケア事業自覚症状を入力しドラッグストアでカードを提出すると必要なサプリが買えたりアドバイスを受けられたりする。人間ドック費用半額補助を付けることで法人契約が期待でき、商社として健康食品やスポーツジム、そして医療分野への進出も可能となる。商社離れをひっくり返し人々に安心を提供し日本全体に活力を与える一大事業。カードにクレジット機能を付けることは一企業としてやりすぎだと考えヤマザキは提案しなかったが…。
BUSINESS 71SOLDIERS同上続きものなので無し
THE LAST
BUSINESS
POWER OF DREAM同上続きものなので無し


 

200809 キン肉マン(旧)

 1984年。キン肉マンで夢の超人タッグ編が終わってキン肉星王位争奪編がはじまったのと同時に週刊少年ジャンプを買い始めた。とはいえ小遣いが厳しいので長続きはしなかった。
 それに先立つイベントとして、夢の超人タッグ編の最終盤はほぼ毎週友人のジャンプを読ませてもらっていた。シリーズが始まったばかりで話がなかなか進まない王位争奪編よりもクライマックスの夢の超人タッグ編のほうが印象が強いのは残念ではあるが当然のこと。決勝戦、剣に貫かれたキン肉マンが『キン肉マン Go Fight!』を歌いながら復活するシーンは最高にカッコよかった。今でも無意識に口ずさんだりする。

    もちろんカッコいいのはこの次のシーンね。

 1987年、王位争奪編で完結したと思われたキン肉マンは、キン肉マンII世を経て21世紀に新シリーズが始まった。当時のファンが編集としてついたと言われており、旧シリーズのネタをふんだんに使い、しかもゆでたまごのくせに説得力に富んだ新シリーズは評価が高い。
 今回あらためて旧シリーズ(と新シリーズ)を読み、キン肉マンの面白さを再度知った次第である。


 

210502 タッチ

 タッチは昭和時代の名作漫画。アニメが大人気だったころ、友人の家で原作漫画をほんの少しだけ読んだことがある。
 マクドナルドのチキンタツタがタッチとコラボしたときに思い出してあらためて読んでみた。

 アニメではカットされているが、『炎の転校生』の主人公・滝沢昇が登場していたり甲子園決定後にアイドル歌手が登場していたりする。アイドルは上杉達也が浅倉南に愛を告白するための重要キャラで一発ネタの滝沢昇と同一視してはいけないが、ウィキペディアによると連載引き延ばしの産物なようで、結局はいなくてもいいキャラだったのかもしれない。
 こういうことがあるから、ちゃんと原作漫画も読まないといけないのだな。

    『炎の転校生』の滝沢昇。もちろん島本和彦による筆。




210829 シュマリ

 シュマリは手塚治虫の作品。明治期の北海道を描いた作品で、『ゴールデンカムイ』が最終章突入を記念して期間限定で最新話まで全話無料公開になったのを機にこちらを読み返した。
 私が住む市ではないが近くの市の図書館には『ブラック・ジャック』『アドルフに告ぐ』など大人向けのいわゆる豪華本が並んでいた。その中に『シュマリ』もあり、読み始めた記憶はあるのだが最後までは読んでいないようだった。
 あらためて読むと、ゴールデンカムイとの類似は思った以上に多かった。時代と舞台が共通なら当然なのかもしれないが。

    この人は主人公でもなんでもなく、この一エピソードで退場するちょい役。

 手塚はアイヌの物語を描くにあたりさまざまな圧力があったようだ。そうはいっても終わってしまったものは仕方がない。今となってはゴールデンカムイがハッピーエンドで幕を閉じることを祈るのみだ。


 

211121 灰羽連盟

 『ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編』をプレイしたとき、どうしてもわからない謎があった。前原圭一が最後に負けてスク水や猫耳などの罰ゲームを一手に引き受けることになった部活動で、部活メンバーの誰がどの罰ゲームを設定したかということだ。
 男多数+女少数で男どもが結託して女の子にセクハラまがいの罰ゲームを与えるというのならわかるが、女子多数+男一人で男に都合のよいエッチな罰ゲームがバンバン出てくるのはどう考えてもおかしい。カイジのティッシュ箱くじのトリックを使い自分だけ難を逃れようとした魅音とそれに気づいた梨花の静かな戦いもあり、各自は勝った時のメリットと負けた時のデメリットを冷静に考えて罰ゲームを設定したはずだ。しかしこの部分の深掘りはなされず、謎は明かされることはなかった。

 灰羽連盟はひぐらし鬼隠し編のコミケ頒布とほぼ同時期に放映されたテレビアニメ。yoneさんが「高評価する人が多いので見たかった」と語った作品で、私は名前も知らなかったがGYAO!で配信されていたのを見てみた。
 だが、これは評価に値しない作品だった。作中の謎がまったく明らかにされないのだ。
 灰羽という存在についてはどうでもいいんだよ。赤ん坊としてではなくさまざまな年齢で繭から生まれる? それは死後の世界を暗示している? うん、そうかもしれないしそうでないかもしれないね。これはそういう設定ということで自分を納得させることができる。壁だってグリの街だって巣立ちだって同様だ。
 だが、物語の根幹を成す真名の謎について放置されているのは許すことができない。

 オールドホームの灰羽たちが主人公に生まれてきたときのことを尋ねる。高いところから落ちる夢を見ていたと主人公は答える。そこで主人公は「落下」から「ラッカ」と名付けられた。
 で、「落下」と同音の真名「絡果」は、誰がいつ決めたのだろう。
 超越者が生まれてきた灰羽に真の名を名付け、周囲の灰羽の精神に干渉して仮の名で呼ばせる。仮の名から真の名を見つけ出すのが灰羽の生涯かけての使命なのだ!──とかならまだマシ。
 実際はその理由がまったく語られないままよくわからん偉い人が真名の名札を持っており、ラッカもレキも自分で自分の名前の意味するところに到達するのではなく偉い人から教えられるにすぎない。
 するとこう思ってしまうわけだ。「え? なに? レキが名付けた落下から偉い人が絡果というそれっぽい言葉を作り出したわけ? それが真の名前って変じゃね?」と。
 こうなると最終話に感動も糞もあったものではなく、礫だろうと轢だろうとどうでもよくなる。「レキが生まれたとき、クラモリが『小石が敷き詰められた道を歩いている夢を見ていた? なら、あんたの名前はコイシだ』と湯婆婆のような決めつけをしていたらどうなっていたのだろう」という疑問を払い避けることができない。

    アニメの原作となった同人誌より。

 いま名古屋テレビで再放送中のファーストガンダムをはじめてまともに見ているところだが、じっくり見るのが苦痛で1話につき2〜3回見ないと話が理解できない。これが自分で見ることを決めた作品でなく、他者が見ているから見てみようとなった作品ではモチベーションが低くなってしまうのも不思議ではない。


 

211219 キテレツ大百科

 キテレツ大百科は藤子・F・不二雄の作品。ドビンソン漂流記の約1年後に雑誌『こどもの光』で連載が始まった。ドビンソン漂流記とは違い単行本はてんとう虫コミックスで刊行された。そのため表紙はよく知っていたのだが、コロ助のどぎついピンク色の顔・ロンパリどころじゃねえ互い違いの目・完成された一枚絵であってほしいのに書かれている「これで火星に行けるナリ」という台詞、と好きになれない要素が山盛りで私の中では評価が低かった。読んだことがないくせに。
 この作品にもっと若いうちに触れていたら私の進路は変わっていたかもしれない。いや、ifの話をしても仕方がない。手持ちのカードで開発を、発明をしていこう。

    素晴らしいパパだ。


 

220206 ゲームセンターあらし

 ゲームセンターあらしはコロコロコミックに連載されていた作品。私が最初に読んだのは炎のコマ誕生の話で、ネットで調べるとどうやら1980年1月号のようだ。
 TVアニメは1982年4月から始まった。子供にチャンネル権があるわけがないので夜7時からのアニメを毎回確実に見ることができたわけではないが、それなりには見ていたと思う。だが、アニメ版はあまり好きではなかったことを憶えている。
 40年近く振り返ることがなくその理由も埋もれてしまっていたが、GYAO!で配信されたのを見て思い出した。
 そしてすぐに違和感を思い出すことができた。私は、アニメ版であらしの目がハットリくんのようなどんぐりまなこになるのが嫌だったのだ。


あらしの家はのび太の家の画が流用されている。
もちろん全景のシーンも多数ある。

ちなみに原作のこの回のラストはこんなに感動的。
これを乳袋の嚆矢と唱える識者もいるとかいないとか(いない)。

 それにしても連載終了後、2000年に完全復刻版を買い、2002年にゲームセンターあらし対マイコン電児ラン+こんにちはマイコン完全版を買い、2020年にこんにちはPythonを買い、2021年にアクションフィギュアを買い、2022年になってアニメ版を再度見ることになるとは思わなかった。
 長生きはしてみ見るものだ。


 

220306 ドン・ドラキュラ

 ドン・ドラキュラは少年チャンピオンでブラック・ジャックの次に連載されていた作品。今となっては「アニメが最短の4話で打ち切りになった作品」として有名かもしれない。
 その超マイナーなアニメを、私は見た記憶がある。ウィキペディアによると1982年4月の放映で、東京ではゲームセンターあらしと同じ時間帯だが静岡県ではテレビ東京がないため水曜日の17時30分から18時までという時間帯だった。ファミコンがまだ出ていないこの頃は金持ちの友人の家でロボダッチやボードゲームやゲーム&ウォッチで遊んでいて、このアニメも自宅ではなく友人宅で見たのだった。


チョコラは流行りのロリコンキャラとしてデザインされた。

昭和時代によく見たこのデレ描写、誰のタッチなのだろうか。


 

220320 キノの旅

 キノの旅はそこそこ歴史のあるライトノベル。2回テレビアニメ化されたことがある。2003年のアニメ化のときにウェブ記事を見かけて「そんな作品知らないな」と思ったことをなぜか憶えている。
 2017年のアニメ版がGYAO!で配信されたときにYoneさんが気になっていたらしいので私も見てみた。

 オバQ立ち上げ時に藤本弘が考えた物語の類型、放浪型と定着型のうち放浪型に属する作品。『銀河鉄道999』を連想したが、ウィキペディアによると実際にそれが根源にあるとのこと。

 完全にはじめて見る作品なので人がバンバン死ぬ生命の軽さには驚かされた。といっても、「そういう作品」であることさえ理解すれば、生命が軽いこともバイクが喋ることも受け入れることができた。本作の1エピソードとして『灰羽連盟』の街が登場したら…それでも真名については引っかかるだろうな。
 また、第1話の冒頭、投宿した際に周囲に誰もいないことを確認した上で銃を構えたシーンにも驚かされた。「そういう作品」であることを知らなかったものだから、突然のその行為の意味がわからず、中二病の発露だと勘違いして笑ってしまったのだ。これもまったく知らない作品を見ることの楽しさの一つだ。

 ゲームにせよ漫画アニメにせよこれまでスルーしてきた過去の名作をあらためて履修することはあっても未知の作品に触れることは多くない。
 たまには知らない作品に挑戦してみるのも悪くはないな。


アニメには旅人になる前の主人公に
名前を呼びかけるシーンはないが、

原作および漫画版では「XXXXX」と呼びかけられている。
小説でそれはどうなの。


 

220501 リボンの騎士

 リボンの騎士は手塚治虫の作品。リメイクおよび続編が描かれており、その歴史をたどるとこうなっている。
少女クラブ1953年1月号〜リボンの騎士少女漫画初のストーリーものを依頼したのはのちにマキノ出版を設立する講談社の牧野武朗。
なかよし1958年1月号〜双子の騎士(原題:リボンの騎士)少女クラブ版の続編。
なかよし1963年1月号〜リボンの騎士少女クラブ版のリメイク。アニメ化もされた。
少女フレンド1967年1月号〜リボンの騎士作画は手塚ではなく、一度も単行本化されていないらしい。
 一般的に「リボンの騎士」として知られるのはリメイクされたなかよし版だが、そのなかよしでは数年前に前作の続編が出ていたというのだからややこしい。
 なかよし版は昔から持っていたが、今回はじめて他の作品と読み比べてみた。元の作品と同じところ、変わったところ、増えたところ、減ったところ。こうやって比較できること自体が楽しさだ。

 現在も多くのスピンオフが作られている。原作では当初は愚鈍だったが途中でサファイアの男の心を飲み込んで男らしさに目覚めたプラスチックが「魂を持たない」主人公となっていたり、悪魔っ子のヘケートが主人公だったり、高校の演劇部の演目となっていたりする。そもそも、最後の手塚原作リボンの騎士も、未来人の主人公が先祖のサファイアに逢いにいくという異色作なのだが。

 2022年公演のリボンの騎士 -県立鷲尾高校演劇部奮闘記-にはわが親戚が出演しているのでぜひ観たかったのだが、コロナ禍で東京出張の機会がなく、観にいくことができなかった。
 テレビドラマすら全部見ることができない私が演劇を楽しめるかどうかはなはだ疑問だけど。

少女クラブ版のヘケートは粗暴。

なかよし版のヘケートは今でも通用する魅力。

双子の騎士のサファイアの息子と娘。


 

220605 シルバークロス

 シルバークロスは藤子不二雄Aの作品。昭和35年、光文社の「少年」に鉄腕アトムや鉄人28号と並んで連載された。藤子は同時期にF・A合作で海の王子も描いている。
 悪の組織、次々と現れる強敵、というよくあるパターン。敵幹部は武士道精神を持つ者など個性あふれるキャラばかりでそこはさすが藤子Aだ。ただし強敵との戦いがメインで悪の組織に奥深さはない。昔の漫画だからというわけではなく、藤子Aはそういうのが苦手なのだろう。プロゴルファー猿もライバルは魅力的だがミスターXの組織そのものはまったく不明のままだったからな。
 サイボーグ009など名作と呼ばれる過去の作品はどうだったかな、また確認しなくては。

主人公側の十字警察もよくわからんな。


 


220612 章説・トキワ荘・春

 2022年4月、藤子不二雄Aとよこたとくおが立て続けに亡くなった。『まんが道』を読み、『まんが道』以外のトキワ荘に関する著作も読みたくなった。
 1980年代にちょっとしたトキワ荘ブームがあったようだ。昭和後期の各作品を年表にするとこうなる。

年月作者作品名備考
1969年10月〜『COM』でトキワ荘関係者による連作
1970年8月〜藤子不二雄チャンピオンマンガ科・まんが道あすなろ編。
1977年11月〜藤子不二雄まんが道立志編・青雲編。
1978年5月トキワ荘物語COMの連作の単行本化。
1981年5月NHK特集わが青春の「トキワ荘」 〜現代マンガ家立志伝〜
1981年9月石森章太郎章説・トキワ荘・春
1981年9月藤子不二雄トキワ荘青春日記
1981年10月フジテレビのアニメぼくらマンガ家 トキワ荘物語COMの一連の作品が元ネタになっている。
1982年11月トキワ荘、解体される
1986年10月〜藤子不二雄ランド第二部 まんが道春雷編。他の作品の巻末に1話ずつ掲載された。
新作漫画『ウルトラB』も載っているよ」のアレだ。
1986年11月〜NHK銀河テレビ小説まんが道
1987年7月〜NHK銀河テレビ小説まんが道 青春篇

 ということで石森章太郎の『章説・トキワ荘・春』を読む。NHKの番組や同時期に発売予定の藤子の著作への言及があり、本の帯には10月放映予定のアニメが宣伝されている。誰が企画したのかは分からないがブームに乗っかって書かれたものであろうことは推測できる。

 石森章太郎については作品や人生を熱心に追いかけていたわけではないので、作品名や人名にははじめて目にするものが多かった。

 東日本漫画研究会で共に『墨汁一滴』を作った最初の仲間、青森県の3人。類家正人は現在は居酒屋のご主人。横向幸雄と菊地満男は不明。
 九州支部の高井研一郎、内山安二、松本晟はいずれもプロになっている。最初の仲間とは違い成功者の名前のみを挙げただけかもしれないが。
 赤塚不二夫ら東京の仲間はまたいつかまとめて書くことがあるだろうから割愛。

 トキワ荘に訪れたファン、高橋瑠美子と高橋由美子。漫画家の高橋留美子ともアイドルの高橋由美子とも別人の、姉妹ではなく同姓のお友達。のちに東日本漫画研究会女子部として『墨汁二滴』という会誌を作ることになる。女子部の仲間には西谷祥子や志賀公江、加奈幸子、別府ちづ子、横山広子らがいる。名前を調べたところ、皮肉にも両高橋だけその後のキャリアがわからなかった。似た名前のビッグネームがいるので見つけることができなかっただけで別ペンネームでプロになったのだと思いたい。
 毎週のようにトキワ荘に遊びに来る彼女たちは石森にとっていい思い出だったようで、(「章説」であるこの本ではなく)COMに掲載された漫画作品において東日本漫画研究会の面々との1コマやトキワ荘の仲間との1コマと並んで石森が二人の少女と談笑しているコマも描かれている。この本を読む前に漫画のほうを目にしていたから、この二人の女の子が何者なのかわからなかったぞ。
 また、池田理代子や里中満智子、竹宮惠子もファンレターを送ったり弟子になったりしている。


『トキワ荘物語』より。高橋瑠美子と高橋由美子かどうかは不明。

 そして、菊容子。名古屋でおこなわれたサイン会には雑誌の表紙を飾った子役も同行していた。旅館で、その中のひとりが怖いからと石森の布団にもぐりこんできたというほほえましいエピソードが紹介されている。その一節の最後が「これが後に、女優となった菊容子である」だ。菊容子を知っている人は驚くだろうが、私はヤングなのでその名に反応することはなかった。漫画関係者ではないようだし。
 本の最後、時代が現在に近づくと、彼女の名が再び登場する。1971年、石森は「好き! すき!! 魔女先生」という実写ドラマを手掛けていた(仮面ライダーと同年)。その主役が菊容子だったので驚き、二人で昔話をした…という話から一転、彼女が男に殺されたという話が出てきてこっちが驚いた。なお、この件について石森の感想はない。
 そんなことがあったら彼女についてもググらずにはいられない。そして…後悔したね。石森が自伝的エッセイで「菊容子は自分の愛人だった」「菊容子は自分に枕営業をしていた」などと語ったという記事が一つや二つではないのだ。その自伝的エッセイってこの本だろうに、よくもまあそこまで歪曲できるものだ。再会時の文章が「名古屋で抱いて寝た女の子、菊容子が…」なのは事実でゲスい読者をニヤニヤさせる意図があったとは思うが、これをもって石森と菊容子はデキていると考えるのは悪意を感じる。


 質の低いサイトは別として、『まんが道』以外、藤子A以外のトキワ荘の思い出話を読むことができたのは幸いだった。
 あといくつか読んだら記事としてまとめよう。自分のために。


 


220710 かくしごと

 かくしごとは久米田康治の作品。
 太宰治「人間失格」のごとく恥の多い生涯を送って来た久米田康治が自分の経験をもとに描いた、自分が漫画家であること娘に隠し通そうとするお話。
 TVアニメは見れる環境になかったが、GYAO!で配信されて見ることができた。

 今年18歳になる架空の息子・智仁のことを思い浮かべつつ、泣きながら笑った。
 以前の記事は本作を念頭において書いたもの。次こそ行け!!南国アイスホッケー部を読もうかな。

原作。

アニメ。

南国アイスの単行本。


 

220814 ゴールデンカムイ

 ゴールデンカムイは冒険・歴史・文化・狩猟グルメGAG&LOVE!の和風闇鍋ウエスタン。ヤンジャンに掲載された最終回まで全話を無料公開したことも話題になった。
 この超大作を読み終えた後の満足感はこれまでで最高のものと言っても過言ではなく、とても我が拙い筆力では表すことができない。

 登場人物の敵味方関係が激しく入れ替わるので相関図や時系列の表を作ろうとも思ったが、公式ファンブックに似たようなものが書かれていたのでやめた。
 うしおととらやエリア88と並んで、これから何度も読み返すことになるだろう。

極上のバディものだ。


 

220904 行け!!南国アイスホッケー部

 行け!!南国アイスホッケー部は久米田康治の初連載作品。1991年、私が大学に進学した年に始まった。その絵の下手さ加減に苦笑しながらも、怒涛の駄洒落連発や下ネタを大いに楽しんだものだ。
 それにしてもこうやって若気の至りを突きつけられるのはいくら本人ではないにしても辛いものがある。
 息子にはSNSなどで身バレして困るような発言をしないよう教えよう。息子、いないけど。

絵柄の変遷もネタにしている。


 

221009 ハチワンダイバー

 ハチワンダイバーは2000年代にヤンジャンで連載されていた将棋漫画。2008年の「このマンガがすごい!」で1位を受賞し話題になった。また偶然だが金曜深夜に放映されたドラマも見ていた。
 プロを目指していたが夢破れた青年が闇の将棋集団と将棋で戦うという、麻雀だったら近代麻雀に掲載されていそうな作品。ヤケクソなほどに巨大な活字による大迫力なやり取りが特徴。
 私は将棋は駒の動かし方を知っている程度ですでに詰んでいる状態はともかく妙手などとても理解できないが、それはヒカルの碁でも同じこと。

 同作者の別作品のキャラクターが多数登場しており話が理解できなくなるところがあるのが欠点。また、バトル要素が多いのはいいとしても、主人公が幼少期から20年の人生を捧げて手に入れたのと同等の棋力を暴力キャラが持っているのは納得しがたい。
 それでも根底にある将棋愛を確かに感じ、十分に楽しむことができた。やはり漫画に必要なのは辻褄の確かさよりも圧倒的な個性だ。


アイラブ将棋。


 

221113 コブラ

 コブラは寺沢武一の漫画。寺沢は手塚プロダクション出身で、ジャンプコミックス1巻には師匠の手塚治虫がコメントを書いている。

 1982年にはアニメにもなった。この年小学5年生の私は数年ぶり(小1以来?)に学研の学習雑誌を買ってもらうことを親に頼み込んだ。『科学』を選ぶつもりが間違えて『学習』を選んでしまい失敗したと思ったが、ある月の付録が私の進路を決めた。ファインセラミックや光ファイバー、形状記憶合金などがパックになっていた新素材セットに感動した私は後に材料工学科に進学することになる…のだが、そのことはこの作品とは関係ない。
 また別の月の付録は趣味入門の冊子だった。手品や切手と並んでアニメが趣味として紹介されており、そこでは放映されたばかりのアニメ版コブラが取り上げられていた。オープニングの最後、つるりとしたタッチが一瞬にして写実的な表現になるのがかっこいいとか何とか熱弁されていたことをよく憶えている。
 当のアニメは見た記憶がないのだが、オープニングの「コ〜ブラ〜 なんとかかんとかブルー」のところが歌えない、ということは記憶にあるのでそれなりに見たのだろう。

これが、

こうなる。

 「寺沢武一が漫画制作にCGを使った」ということが新聞記事として取り上げられたこともなぜか憶えている。ウィキペディアで調べると1985年のBLACK KNIGHT バットのことだと思われる。
 大学時代、ツチノコ探しの旅の途中で八代さんがスーパージャンプを読んでいたのを期に私も同雑誌を読み始めたのだが、そこにはデジタルで描かれた新作が掲載された。ジャンプコミックスがサークル部室にあってあらためてじっくり読んだのもこの頃だ。

 そんなこんなで私の人生の要所要所にコブラがあった。
 今回、週刊少年ジャンプ時代のエピソードのうちどれが後にカラー化されたのか、全エピソードのうちどれがテレビアニメ化されどれがOVAとして制作されたのか、を調べようと思ったのだがやめた。複数のエピソードに登場するキャラはクリスタルボーイ以外にもけっこういて、そういうのも網羅しようと思ったら切りがなくなってしまったのだ。GYAO!でテレビアニメが配信されたのをすべて保存しているが、見るべきアニメは他にも多数あるのでこれを見ることはないであろう。
 そんなときは? 笑ってごまかすさあ!


珍しく真面目な表情のコブラ。
このあと「笑ってごまかすさあ」になる。


 

221204 サイボーグ009

 サイボーグ009は石森章太郎の代表作。
 中学時代、ある友人がブラック・ジャックを買い揃えたことから私の周りで古典ブームが起こったことがある。それで別の友人がサイボーグ009を買い、私も読ませてもらった。私がリボンの騎士を買ったのもこのブームの一環である。
 OPが名曲と名高いアニメ第2作は再放送で見た。平成のアニメ第3作は履修するつもりはあったがあまり見ていない。自炊のできない会社独身寮に住んでいて日曜18時30分のアニメを見るのは大変だからだ。ビデオデッキも持ってなかったし。
 そんなこんなで久しぶりに本作品に触れた。

 中学時代の友人が持っていたのは秋田サンデーコミックスで、「天使編」のあとは「神々との戦い編」をスルーして「エッダ編」などが始まっている。そのため問題作「神々との戦い編」を読むのは今回がはじめてだった。
 009と003のベッドシーンがあるとのことでたいそう期待したのだが、手塚治虫がそうだったように、たとえベッドシーンであっても特別色っぽくは描かれていなかった。

抱いてとせがむフランソワーズと
それに応えるジョー。
 物語の難解さやこのベッドシーンが読者の不評を買ったとのことだが、相手は掲載誌が転々としても追いかけつづけてくれる熱心なファン。批判はベッドシーンの存在そのものだけではなかったのではないだろうか。
 ネタバレは避けるがベッドシーンだけあって二人の心理描写が乏しいことや、せっかくのヌードなのに古臭いタッチであることに失望した人も多かったのではないか、と私は考える。
 COMで「神々との戦い編」が始まった1969年といえば、すでに元アシスタントの永井豪はデビューを果たし問題作『ハレンチ学園』を連載している。また、藤子不二雄が『ミノタウロスの皿』でヒロインの乳首を描いて新境地を開いたのもこの年だ。大御所手塚治虫がプライム・ローズでも脱却できなかった女体描写だが、(トキワ荘メンバーの中では)最若手の石森にはそれくらいの期待があっても不思議ではない。

 ここまで読んでも石森いや石ノ森没後に描かれた完結編などは未着手なので、これからも追いかけていく必要がある。


 

221218 ドラゴンクエスト ダイの大冒険

 ドラゴンクエスト ダイの大冒険は1989年から1996年まで7年にわたってジャンプに掲載された。
 鬼面道士やサンテレビ地獄の騎士に愛の心を持たせたこの作品を当時の私はあまり評価していなかった。ゲームのキャラを借りただけのまがい物とみなしていた。
 だが大魔王バーンの壮大すぎる野望を知ってからは目が話せなくなった…と思う。

 本作は日数をカウントするとわずか3ヶ月足らずという話をネットで見ていたので今回読み進めながら確認しようと思ったのだが、2021年にに刊行されたオフィシャルファンブックに全行程が書かれていた。デルムリン島出発の日を1日目とするとバーンを撃破したのは86日目らしい。

最高に燃えるシーン、ポップのカイザーフェニックス引き裂き。
この後バーン様の驚愕の表情が続き、次のコマではすでに引き裂かれている。

アニメでは解呪処理が追加されている。
(容量削減のためバーン様が驚いているシーンはカット)


 

230106 魔太郎がくる!!

 魔太郎がくる!!は藤子不二雄Aの作品。手塚のブラック・ジャックとほぼ同時期にチャンピオンに掲載された。
 うらみ念法と称し物理的な方法で誤解の余地なく相手を殺害していた掲載当時の作品は今ではほとんど読むことができない。現在刊行されている単行本では多くのエピソードがカットされ、掲載されたお話もマイルドに修正されている。今回私が読んだのも文庫版だ。
 いじめや復讐の内容はともかく、物語の導入としては、ジョージ・フォアマン対モハメド・アリの世紀の一戦ありブルース・リーあり、切手収集にモデルガンにマグリットの石男子バレーと当時の流行や作者の個人的嗜好を垣間見ることができて非情に興味深い。

 チャンピオンコミックスを含め一度も単行本化されていないエピソード(魔太郎が活躍するのではなく、藤子不二雄がいじめ体験について語っている)があるが、教育関係の本に掲載されている。鶴舞図書館にあるようなので見に行こうかな。


スネ吉的ポジションにいるおじさん。
蛇使いの笛やらブードゥーの呪術道具やらをくれる。私もこんな親戚が欲しかった。


 

230205 デカスロン

 デカスロンは1990年代にヤングサンデーで掲載されていた作品。のちにへうげものでブレイクすることになる山田芳裕の出世作。
 大学時代、風呂帰りのコンビニでヤンサンをよく立ち読みしていた。何が一番の目当てだったのかは今となっては思い出せないが、本作は偶然目にしたのが強烈に記憶に残りそれ以来読み続けていた。就職してコンビニ立ち読みしなくなってから漫画喫茶で最後まで読んだほど。
 あらためて読んだが、主人公に魅力が足りないもののライバルたちの苦闘には心動かされた。

 作中の選手の記録をExcelに入力していろいろ分析しようと思ったが、面倒なのでやめ。


現実の世界最高得点は9126点。


 

230219 ノーマーク爆牌党

 ノーマーク爆牌党は大学時代に流行った麻雀漫画。片山まさゆきの代表作…と思っていたがさらに人気の作品が出たようでそちらが代表作らしい。いいことだ。
 かつて2ちゃんねるまとめサイトの「中だるみがなく最後まで面白い漫画」というスレでうしおととらなどの名作と並んで本作が挙げられていたのを目にした。これには私も大いに賛成だ。
 闘牌のすべての理屈を読み解けているわけではないが、少なくとも囲碁アメフトよりは理解はできる。

 いなか工場に常駐していたころ社内LANを使って仲間内で麻雀ゲームをしたのが最後の麻雀体験だ。リアルの麻雀は入社1年目か2年目に保養所で打ったのが最後。
 もう点数計算もおぼつかないが、また打ちたいな。八代さんやyoneさんと。


八崎の会心の一撃を食らった茶柱がそれでも崩れず反撃するまで。
こんなにあったんだ。


 

230305 暗殺教室

 暗殺教室魔人探偵脳噛ネウロの松井優征の次の連載作。アニメ化や実写映画化もされた。
 中学3年の1年間というタイムリミットがある中で、実に緻密に学校生活と暗殺が描かれる。クライマックスでは学校生活が疎かになってしまうのが残念なところ。
 それでも帯ギュで書いた私の大好物、仲間同士がそれぞれの信念のために分裂し衝突しあうエピソードはニヤニヤが止まらなかった。悩め若者よ。


理系メガネっ娘奥田さん。
ちゅき。


 

230326 ちはやふる

 ちはやふるはアニメ化や実写映画化もされた少女漫画。競技かるたを題材としており、熱血スポーツ漫画と評されることもある。
 主人公たちは高校生の選手権大会だけでなく名人戦・クイーン戦も目指すのだが、後者にはさまざまな年代の選手が登場する。天才小学生から子持ちのおばさんから「知的な熊」と喩えられるおっさんまで。さらに、狭い世界なので読手や審判も現役のトップ選手が務めるのだが、彼らも個性たっぷりに描かれている。
 そのバリエーションの豊富さは、他の競技(囲碁とか競艇とか)の作品で物足りなさを感じることの多かった私を大いに満足させた。
 そのかわりと言っては何だが、モブキャラは一言二言で表現できてしまう深みに欠ける性格になっている。「書道を嗜んでおり、書道はやり直しが効かないため思い切りの良いかるたを取る選手」など。まあ、そもそも、主人公の親友になる主要キャラが「呉服屋の娘で古典オタク」というわかりやすいキャラ付けだしな。

 また、これまでも何度か書いているが、普段は仲が良い仲間たちが部の方針を巡って分裂しそうになる展開も素晴らしい。悩め若者よ。


少女漫画でちん毛なんて言ってはいけません。


 

230409 打姫オバカミーコ

 打姫オバカミーコノーマーク爆牌党の後に描かれた片山まさゆきの代表作。
 ビジュアルだけでプロになった素人同然の女流雀士と再起を図る元トッププロが主人公で、作中のレクチャーは読者にとっても大いに勉強になる。

 片チンによる高度に簡略化されたオトナの世界は朴訥な私でも理解できるもので、オシャレな雰囲気は憧れるに十分なものだ。
 昼はスターバックスならぬブターサックスでコーヒーを飲み、夜はバーでお酒を飲む。それだけだとお腹がタポンタポンになってしまうので時にはボウリングやダーツをする。そんなトレンディな男女交際をナウなヤングである智之くんも楽しんでほしい。そして麻雀の面白さを知ってほしい。


これはカッコつけてオチるシーンだが
普段は普通にカッコいい。


 

230430 MW

 MWは手塚治虫のサスペンス漫画。同性愛描写が話題になったらしい。
 某国の毒ガス兵器「MW」に関する陰謀、WMにより良心を失ってしまった男の理由なき犯行、という物語。
 犯罪者のほうは共感できないし、歌舞伎役者の血筋という設定で女装もお手の物というのは都合が良すぎると感じるが、もう一人の重要人物は興味深く注目することができた。

 かつて不良だった賀来巌。彼は15年前に悪友たちと沖ノ真船島を訪れ、その島に偶然来ていた金持ちの息子を拉致する。それが結城美知夫だ。
 賀来は洞窟で見張りを命じられる。その晩、賀来は幼い結城少年を抱いた。また、その晩にMWの漏出事故が発生し、島民も悪友たちもことごとく死んだ。
 その惨劇を目にした賀来は神に救いを求め、神父となった。
 一方、結城はMWの影響で結城は倫理観を失ったまま成長してしまった。

 二人がいつ再会したのか、いつ攻守逆転したのかは描かれていない(事件以降ずっと付き合いがあるような台詞はある)。物語開始時点では結城は事件の関係者(事故当時は島に不在だった元・島の役人など。政治家や軍人にはまだたどり着けていない)に苦痛を与えながら賀来神父のもとに懺悔に来るという関係だった。
 賀来は神父として結城の罪を刑事に伝えることなく、結城の魂を救うために動く。結城はそんな賀来を信頼した上で一蓮托生とするために懺悔に向かい、また彼と身体を重ねたりする。

 …いやー、きりひと讃歌でも思ったけど、神父さんてのは大変な仕事なんだなあ。


賀来はゴルゴに似ているホモ受けしそうな顔をしているな。
結城はこのもみあげでかつらをかぶって女装するのは無理があると思う。


 

230514 20世紀少年

 20世紀少年は浦沢直樹の漫画。1999年から2007年まで実に8年かけて語られ、3部作の実写映画も公開された。
 映画版の結末はともかく、漫画を読んだ人の多くの認識としては、
2000年 血のおおみそか フクベエは"ともだち"の正体を知っている様子だった。二人はもみ合いになりビルから転落する。
その後ともだちタワーに"ともだち"が現れ、ケンジの前でハットリくんの仮面を外す。
読者に明かされるのは2015年の事件と同時進行だが、"ともだち"の正体はフクベエだった。最初の男は影武者といったところか。
2015年 元日の夜"ともだち"、ヤマネによって殺害される。その正体はフクベエだった。
2015年 万博開幕式"ともだち"、蘇って暗殺されそうになったローマ法王を救う。
ともだち暦3年"ともだち"、死す。その顔はやはりフクベエだった。
2015年にフクベエが死んだあとの"ともだち"の正体は、ケンジが根拠なく語ったところによるとカツマタだった。
といったところだと思う。

 映画では「フクベエは子供の頃に死んでおり、"ともだち"は最初から最後までカツマタだった(もちろん影武者を除く)」という展開になっている。
 さらに、完結して10年近く経った2016年に「完全版」が出ているのだが、そこで加筆された物語は映画版に沿っているらしい。これは映画版の展開を逆輸入し結末を変えたのではなく、説明不足だった本編を文字通り加筆修正したものなのだろう。
 これにより納得できるようになったことも多いが、逆に辻褄が合わなくなってしまったところも多い。加筆された真相の部分の中にも記憶違いがありそうなのが嫌らしいところだ。

従来版完全版
 
「おまえさ、カツマタ君だろ」の
一言で終わり。
フクベエは小学校卒業してすぐの春休みに誰にも知られずに死んだ?
それでカツマタがフクベエになりかわった? はあ??

 私が一番知りたい謎は"ともだち"の正体ではなく別のことだ。そしてそれの謎は明かされることなく終わってしまった。
 すなわち「同学年の子から無視され死んださえと思われていたほどのいじめられっ子が、どのようにして世界的なカリスマとなったのか」という謎について、作者は責任をもって説明してほしいものだ。その万分の一でも参考にさせてもらいたいのでぜひよろしくお願いします。

 

230605 バクマン。

 バクマン。デスノートの大場つぐみ・小畑健のコンビによる作品。NHKでアニメにもなった。
 若き漫画家たちの物語だがジャンプゆえにバトルばかりでクリエイターとしての産みの苦しみなどはほとんど触れられていない。これではなぜ漫画業界を漫画にしたのかわからない。
 主人公には読者が共感できる弱さがなく、ライバルは天才タイプといえば聞こえはいいが何を考えているのかわからない変人でやはり魅力には乏しい。
 まあ、こうやってスラスラ読み進めて心に残るものがない作品というのもたまには悪くない。


なんでこんな変な顔してんの。もっと真面目な表情を見せろよ。


 

230625 モンキーターン

 モンキーターン帯ギュの河合克敏の作品。テレ東でアニメにもなった。
 若き主人公が競艇の世界で頭角を現していく物語だが、高校の部活ではなくプロとなると年に百回以上試合があるし、上には上がいるしで勝ち続けるとリアリティがなくなってしまう。
 しかも競艇は大抵の場合第1ターンで勝利が決まってしまうものだからレース内容もあまり面白そうには思えなかった。

 ちはやふるの項でライバル選手の少なさについてそれとなく言及したが、あらためて読んだところ様々な年代の魅力的な選手が多数いた。
 世の中にプロ野球の漫画作品は多いが、あれらってどうなってるんだろ。一度読んで見なくては。


最終巻の4コマ。作者曰く立つ鳥跡を濁しまくり。


 

230709 ゾンビ屋れい子

 ゾンビ屋れい子はホラー漫画雑誌に掲載されていた漫画。ニュース掲示板「街の灯」の常連のgerorine氏がよく語っていたので私も読んでみた。約20年前に。
 最初の頃は依頼を受けて死者をゾンビとして蘇らせるという展開で人間ドラマがメインだったが、次第にゾンビをジョジョのスタンドのごとく使役していくアクション漫画となった。
 設定もどんどん盛られていき、双子の姉と戦ったり前世の因縁の敵と戦ったりしている。とにかく面白ければ細かいことは気にしないスタンスなのだろう。
 たまにはこういう作品を頭を空っぽにして楽しむのもいいものだ。

初期はこんな絵柄。

終盤はこうなる。


 

230723 オトナテヅカ

 手塚治虫はビッグコミックで地球を呑むI.Lきりひと讃歌奇子ばるぼらシュマリMW陽だまりの樹を連載した。

 地球を呑むは1968年のビッグコミック創刊号から連載が始まった。
 謎の美女ゼフィルスを巡るサスペンス…と思いきや、彼女の正体は割と早く明らかになる。夫に裏切られ、金と法律と男を恨みながら死んだ女ゼフィルス。母の名を継ぎ人造皮膚で美貌のマスクを被った娘たちこそがゼフィルスだった。
 ゼフィルスは手塚スターシステム的には本作でデビューしたキャラクターとされているが、リボンの騎士(なかよし版)のビーナスが元だと思うなあ。
 それはともかく、人造皮膚の流行は他人へのなりすましに使われ治安が悪化し、また母ゼフィルスの母国の黄金をばらまき貨幣経済は混乱に陥った。
 テーマが拡散してとりとめのない話になってしまっているが、文明社会が崩壊してしまう話は個人的には大好物だったりする。名作火の鳥から、マイナーなところでは鳥人大系まで。

主人公の五本松は女よりも酒を愛す。


 I.Lは地球を呑むに続いて連載された作品。
 人類が月に到着したことにより幻想と夢の世界だった月は現実に引き戻され、この世は味もうるおいもないものになっていった。
 失業した映画監督の伊万里大作はアルカード伯爵なる人物からI.Lという娘を与えられた。伯爵は言う、彼女を使って理屈で割り切れない事件を演出してほしいと。
 そんなこんなで少し奇妙な男と女の物語が紡がれる…という構成。とはいえ、「何者にでもなれる女優」では自分というものがなく狂言回しにもならない。伊万里自身が動く話もあるが、多くの話では伊万里は表に出てこない。
 本作は(も?)失敗に終わったが、ごく普通のサラリーマン的な造形の伊万里大作はブラック・ジャックに何回か出演し、なかなかナイスな役どころをもらっている。
 それだけでも本作が世に出た意味があったと言えるのではなかろうか。

このパッとしない男が。

名作『おばあちゃん』ではBJに「それを聞きたかった」と言わせる。

また、『助け合い』ではBJを助ける蟻谷を演じた。この話も大好きだ。


 ばるぼらは少し飛んで奇子のあと、1973年に連載された。
 芸術家の物語で、内容は難解。詩人や文豪の言葉が頻出するのも「いやー、芸術家だねー」というより衒学さを感じて好きになれない。
 表面的に読むだけ読んで楽しもうにも、耽美派の人気小説家で変態性欲を持つとフーテンの小娘という組み合わせはどちらにも感情移入することができず楽しむことができない。
 しかも例によって女の肉体描写は魅力的ではない。
 これはもうnot for meというしかない。

嬉しくない。
 ちなみに彼女はブラック・ジャックでは若い女性の患者という脇役しか与えられていない。


 

230820 手塚治虫と戦争

 手塚治虫公式サイト内の「手塚治虫と戦争」というコンテンツを見た。https://tezukaosamu.net/jp/war/
 そしていくつかの作品を読んだ。

 がちゃぼい一代記は1970年に別冊少年マガジンに掲載された。昭和20年9月、昭和22年10月、昭和28年7月、昭和37年10月、昭和40年4月の手塚が描かれている。
 そういうお話なので終戦直後の昭和20年9月といっても悲惨な描写はない。

漫画の神様との出会い。

 ゴッドファーザーの息子は1973年に別冊少年ジャンプ(のちの月ジャン)に読み切りで掲載された。漫画家自伝シリーズの一つで、藤子Fが『スタジオ・ボロ物語』を描いたのもこの企画だ。
 自身の漫画が縁で番長と仲良くなるという藤子Aの『まんが道』にも見られる展開だが、手塚(1928年生まれ)の藤子(Fは1933年生まれ、Aは早生まれで同学年)の生まれた年の差が戦争体験の差になって現れている。本作では仲良くなった番長は兵隊に取られて戦死してしまうのだ。
 架空のキャラなのだとは思うが、架空の友人を戦争被害者ではなく特攻隊として死なせるところが手塚治虫のリアルなのだなあとは思う。

旧制中学は5年制だが、昭和19年に4年だった者は昭和20年3月に4年で卒業した。

 カノンは1974年に漫画アクションに掲載された。自伝ではない。戦後30年がキーワード。
 30年ぶりの小学校のクラス会。そこには、空襲の直撃により肉の切れ端になった同級生の、B29の掃射を受けて顔が割れたスイカのようになって死んだ担任の先生の、元気なころの姿があった。という、すこし(S)ふしぎ(F)なお話。
 読後感は良いが、どうしても昔読んだホラー漫画『地獄の招待状(Wikipediaに項目があるのか! というか作者は槙村ただしだったのか!)を思い出してしまう。

同級生たちは自分が死んでいることを認識している。

 紙の砦は1974年に少年キングに掲載された。主人公はオサムテヅカならぬ大寒鉄郎。昭和19年から終戦までを描いている。
 戦争が終わって「これで漫画を描ける」と万歳したと手塚はインタビューなどでよく語っていたが、本作でもそのことが描かれている。ただし本作では無邪気に喜ぶ大寒の隣にオペラ歌手に憧れていたが空襲で顔を傷つけてしまったガールフレンドがおり、なんとも言えない読後感となっている。
 すきっ腹のブルースは1975年に少年キングに掲載された。主人公は大寒鉄郎で紙の砦の続き。
 芋泥棒、ギブミーチョコレート、色気より食い気と戦後の食料危機がテーマの作品だが、そのすぐ隣には常に行き倒れの死体があった。

 紙の砦は3部作の予定だったが、漫画家になった大寒鉄郎が主人公の3作めは描かれなかった。

大寒、空気読め。

人の死体が腐っていく様も描かれる。

 どついたれは1979年にヤングジャンプで連載された。大長編の予定だったが打ち切りにになった。
 手塚をモデルとした高塚修なるキャラが登場するが、脇役でこそないが主要人物とも言えない程度の扱いだ。

投げ捨てるが後になって
食えばよかったと後悔する。


 

230910 上野さんは不器用

 上野さんは不器用はヤングアニマルに連載されていたちょっとエッチな漫画。
 ふたりエッチに興奮するトシでもなく3月のライオンはノータッチ。ベルセルクはほとんど休載状態にあり、ヤングアニマルで読めるのは信長の忍びくらいなもの。そんなときに出会った「読める」作品がこれだった。
 暗殺教室の奥田さんもそうだが、私は理系少女が好きなのだな。
 STAP細胞はあります!

これがアニメになってアイドル声優におしっこ連呼させるの、そっちのほうが興奮するよ。


 

230924 追悼 寺沢武一

 2023年9月に寺沢武一が亡くなったことを受け、コブラ以外の彼の作品を読み返した。

 BLACK KNIGHT バットはコブラ終了後の1985年に少年ジャンプで始まった。前にも書いたがCGを使ったことで話題になった。
 黒とも騎士とも蝙蝠とも関係なさそうなお姫様(名前がバット)が主人公の、コミカルなファンタジー。
 CGの評判がどうだったのかは今となっては想像もつかないが、少なくとも内容はコブラの作者の次の作品として求められているものとは違っていたようだ。10話で打ち切りとなった。

当時PC-98で作られた原稿。8色。

のちにリメイクされ、ネット上で連載された。

 鴉天狗カブトは1987年にフレッシュジャンプで始まった。
 途中で一旦連載が終了し、少し経ってタイトル変更・主人公変更(2代目になった)で第2部が始まったという経緯を持つ。21世紀でいえばタカヤのようなものかな。
 そんな単行本2冊の小物だが、テレビアニメやOVAにもなっているようだ。

「そおーだ」でコブラを思い浮かべる。

 ゴクウは1987年にコミックバーガーで始まった。雑誌の性格上コブラより少しアダルトで、情事後の女とその偽物を見分けるのに女の股間のペニス型の温度分布を調べたりしている。
 宝蔵院裏流の棒術使いで無類の強さを持つがコブラほどのスーパーマンではなく、水に落ちたときはオキシシガーでなくタイヤチューブで空気を供給していた。
 ゴクウに神の目と如意棒と与えた者の正体が明かされることなく終わってしまったのが残念。

IoT時代の描写より中国人のヤバさの描写が素晴らしい。

 武 TAKERUはゴクウと同じコミックバーガーで1992年から始まった。ウィキペディアによると世界初のフルCG漫画。
 言霊を操る主人公、大和の国、という設定ゆえに一文字武の冒険は1エピソード、単行本2巻で終わっている。人気の事情もあるかもしれないけど。
 そうそう、武の衣装が赤一色なのはコブラとの差別化ができていないと思うなあ。

武が一目惚れした風姫。実は替え玉で、しかも男だった。えー?!

 ガンドラゴン Σは1999年にスーパージャンプで始まった。スーパージャンプは少年ジャンプで一旦終了したコブラの新作が掲載されていたこともありよく立ち読みしていたのだが、これを読んだ記憶はない。
 CGとモデルの人間(インリン・オブ・ジョイトイ)の写真を組み合わせて作られた作品。
 いくらエロテロリストがモデルとはいえ、寺沢武一が描くセクシー美女の魅力を再現することは不可能だ。おっぱい出すわけでもないし。
 続編のガンドラゴンIIでは出演している女性モデルが増え、コスチュームもバラエティ豊かになった。

絵コンテを元に

ポーズを決めて写真を撮る。
もちろん寺沢本人が。

背景やキャラを3DCGで作る。
ダミーだが主人公も必要だ。

こうやって一つのコマができる。

 ウィキペディアにある寺沢武一の全作品を読んで思ったのは、「もう一度コブラを読もっと」ということだった。


 

231008 パーマン

 パーマンドラえもんほど繰り返し読んだわけではないので、今でもそれなりに新鮮に読むことができる。
 1983年に始まったアニメは特別番組(?)で少年少女が手をパーにしながら元気に「きてよパーマン」のバックコーラスを歌う姿が放映されたのを見て共感性羞恥を感じ、それ以降無邪気に歌うことができなくなったものだ。これが私の中二病の始まりだったのかもしれない。

 それはそれとして、正体を隠してヒーロー活動をおこなう本作は考えさせらる展開が多い。平凡な小学生須羽ミツ夫は悩んで悩んで決断して行動する。
 犯罪もギャグタッチなものが多いのは当然として、のちのエスパー魔美を彷彿とさせる社会的なものもある。
 「『寺沢武一の作品はどれも似たようなものだ』なんて言おうものなら藤子不二雄はどうなんだという話になる」と思い読み返してみたが、やはり後世に残る作品には光るものがあるのだな。いや、寺沢がコブラだけの一発屋と言いたいわけではなくて。


告げ口するガン子を叱るママ。


 

231029 ドカベン+大甲子園

 2018年にドカベンシリーズが完結したとき、2022年に水島新司が亡くなったとき。折に触れてこの大作を修得するつもりはあったのだが、なかなか手が出せなかった。
 大甲子園は大学時代に読んだことがあるがドカベンはノータッチだった。とりあえずはここまで読んだ。

 あらためて思ったのだが、この作品、序盤の柔道を除けば本当に野球しかしてないんだな。それでも面白いのだから不思議だ。
 試合の途中に回想シーンを挟む手法はスラムダンクにも影響を与えているのかもしれない

記憶喪失の山田太郎、ごくまともなツッコミをする。


 

231112 巨人の星+新巨人の星

 巨人の星は歴史に残る…には少し時代的過ぎる作品。
 星が巨人に在籍した頃は川上哲治が監督で長嶋茂雄・王貞治が人気実力兼ね備えた頼もしい先輩。新巨人の星は長嶋新監督が球団史上初にして今なお唯一のリーグ最下位となった1975年がスタート。この時代を理解できる者のみか本作を十二分に楽しむことができるだろう。私のような若輩者にはとてもとても。21世紀を舞台としてリメイクされた『新約「巨人の星」花形』でもプロ編までは描かれていない、らしい。
 ドカベンが高校野球編からプロ野球編に移行するにあたり時代が20年ほどワープするのとはわけが違う。

 1968年9月18日の巨人阪神戦の王への死球、乱闘、そして長嶋茂雄のホームランの大荒れの一夜も詳細に描かれている。物語では花形に大リーグボールを予告ホームランされるのがまさにこの試合(当然一連の現実の事件のあと)。当時の人たちにとってこの試合は伝説に残る試合だったのだろう、今なおこうやって語られるほどに
 このエピソードが何年何月の少年マガジンに掲載されたのか調べることができなかったのは残念だ。

星一徹も遊園地で歓声を上げることがある。


 

231126 あまいぞ!男吾

 あまいぞ!男吾はコロコロで連載されていた作品。といっても1986年連載開始ですでにコロコロを卒業していた私は読んでいない。
 2002年にトラウママンガマガジン(トラマガ)というオッサンホイホイな雑誌が刊行された。その創刊号でゲームセンターあらし(の続編『ゲームセンターあらしA』)と並んで表紙を飾ったのが本作(の続編『だんじて!男児』)だった。
 世代が違うがゲームセンターあらしと並ぶほどの話題作。これは体験しないわけにはいかない。
 あらしに関してはトラマガの出版社からマイコン電児ランおよびこんにちはマイコンの復刻版が出た(あらし本編は他社から2000年に復刻されたばかりのためここからは出ていない)。それと並んで本作も復刻され、21世紀になって読むことができたのだった。

 作者が言及しているようにあばれはっちゃくを彷彿とさせる人情もの。ファミコンやミニ四駆が全盛だったであろう当時のコロコロの中でこれが人気だったとは意外だ。意外だが人気だったのも納得の面白さだ。そして人気ゆえ連載が続き、小学5年生だった男吾は中学生になり、ついには高校生にまでなってしまう。コロコロで高校生が主人公なんてありえるだろうか!…というと過去にはバイオレンスな刑事モノもあったことだしまあ「あり」なのだろうけど、異例は異例だ。

 もう一つ私に思い出させたものがあった。すっかり忘れていたが、むかし私は本作のヒロイン・奥田姫子のようなカチューシャキャラが好きだったのだ。しかし具体的にどの作品のどのキャラが好きだったのかまでは思い出せなかった。
 フランソワーズ・アルヌール(サイボーグ009)ほどのお姉さんキャラではないのだが…。

小学生編の悪役(右上)が、
中学生編のヒロインになる。


 

231217 キン肉マンII世

 大学時代、若者の教養の教科書としてときどき週刊プレイボーイを購入していた。特にJリーグ開幕特集は役に立った。開幕前はジーコしか見どころがないような紹介のされ方だった鹿島アントラーズが蓋を開けてみると初年度の前半戦優勝の大活躍だったのには驚いたものだ。
 もちろんヌードグラビアやアダルトビデオのコーナーも楽しんだ。中でもダジャレタイトルの「ジ・エロニモ」は忘れられない。
 当時は漫画はサーキットの狼II モデナの剣が連載されていた。1970年代のスーパーカーブームを経験していてもサーキットの狼を知っているわけではないので本作にはそれほど注目しなかった。もともと毎週購読していたわけではないし。

 就職してからも、入社直後は新入社員全員がいなか工場の寮に押し込められ娯楽が少なかったのでときどき週刊プレイボーイを買っていた。その頃は宮下あきらの天より高くが連載されていて、男塾のキャラが総理大臣になったり防衛庁長官になったりしていた。

 それ以降週刊プレイボーイは買っていないのでリアルタイムでは読んでいないが、何回かの短期連載を経て1998年からキン肉マンII世が始まった。
 ただし現在から見た評価はあまり高くない。イマドキの若者としての要素が前面に出た主人公・キン肉万太郎の惰弱さやキン肉マン世代の超人へのリスペクトの欠如ゆえに。
 それでもこれらの不本意な出来の作品がキン肉マン新シリーズの高評価につながるのだから素晴らしい。

キン肉マンは若い頃の連戦でボロボロ、
年をとってからできた息子に甘々。


 

240107 め組の大吾

 め組の大吾は1990年代にサンデーで連載された。個人的にサンデー黄金期の一角をなす名作。
 熱血、成長、漫画的ハッタリで解決する爽快さ。これがテレビアニメ化されていないなんて信じられない(ごく狭い範囲で劇場公開されたアニメがあったようだ)
 曽田正人という漫画家さんは天才とそれに振り回される凡人の物語を得意とするらしい。大人になって読み返し、朝比奈大吾の活躍の捕らえ方が変わっているのが我ながら面白い。

 2020年に続編が始まり、初代を差し置いてテレビアニメ化されている。
 続編では朝比奈大吾は伝説の救助隊員(初代も最終盤ではすでに世界的に有名になってたけど)。ウィキペディアには「数多くの人命を救いながらも彼の救助方法は常に賛否両論を呼んできた。その巨大な才能を既存の消防・救助のシステムは持て余し、混乱さえ生じ、個人と組織が互いを活かし切れなかったという意味で悲劇的な結末を迎える」と記載されている。
 真相はまだ明らかになっていないが、スカイツリーが倒壊し火山弾?隕石?が降り注ぐ地獄絵図の中で救助がおこなわれる近未来が断片的に描かれている。それは私の期待するスケールアップの方向ではないというのが正直なところだが、そんな私の懸念をも吹き飛ばす展開を期待したい。

要救助者を投げ落とす事例。続編でも幾度となく言及される。


 

240204 進撃の巨人

 進撃の巨人は2010年代を代表する傑作。「漫画読みに問う この才能は本物か!!?」という強烈な煽り文とともに始まり、世界中の漫画読みに圧倒的な漫画力を見せつけて完結した。
 別冊少年マガジンでの連載は12年の長きに渡り、TVアニメ版もじっくり10年かけて放映された。何なんだよファイナルシーズンの完結編の前編後編って。

 王政編での人対人の戦いやマーレ編の開始など人気が下がる要素があったとは思うが、それでも全速力で走り切ることができたのは幸せなことだ。
 「異能を持つ戦士が正体不明の怪物と戦う物語だったが、いつの間にか戦士同士がそれぞれの能力で戦う話になっていた」という作品は少なくない。寄り道したままで終わってしまうか、それともあくまで大きな物語の中の一要素として盛り上げた上で本筋を貫き通すか。それは作家性ではなく人気が決定しているのだろう。
 不本意に終わったあの作品やこの作品も、作中で語られることのなかった世界の成り立ちまで本当は考えられていたのだろう。
 そう考えると、大長編が完結したことのありがたさを感じずにはいられない。


私はよかったと思う。本当に長い物語だったけど、伏線も回収されたし。


 

240218 ブラック・ジャック前夜

 ザ・クレーターは少年チャンピオンが隔週刊で創刊されたときに連載された短編シリーズ。作品に一貫したテーマはなく、タイトルにも別に意味はないらしい。

月を舞台に浦島太郎するにあたり、登場人物を殺したうえで蘇らせるのが手塚。藤子ではありえない。


 やけっぱちのマリアは1970年にチャンピオンに連載された。エッチな漫画の氾濫を目の当たりにした手塚が、これまで性描写をタブーとして避けていたのが馬鹿馬鹿しくなってやけっぱちになって描いた作品。
 そうはいっても性癖全開にすることはできず、性教育漫画というエクスキューズをしている。
 手塚本人がキワモノだ駄作だと評しており、半年ほどで終了となった。

 マリアは主人公が母性愛に飢えていたために産んたエクトプラズム。体はビニール加工業者の父が作ったダッチワイフ。
 これでは精神的にも肉体的にも恋愛につながるわけがないと思うのだが、手塚治虫がどう考えてこんなキャラを作ったのかまったく不明だ。

ときどきネットで見る(こことかこことか)この画像は本作にあった。


 アラバスターはやけっぱちのマリアに続いてチャンピオンに連載された。手塚がスランプのどん底で描いた作品。こちらもほぼ半年で終わった。

 黒人であるがゆえに恋人に捨てられた男、ジェームズ(連載当時は顔にアザを持つ黒人とのハーフの日本人)。彼は生物を透明にする光線を浴びようとして失敗、皮膚のみが消えて血管が浮き出て見える世にも恐ろしい姿になってしまった。
 アラバスター。宝石のこけおどしのきらびやかさも水晶の冷たさもくもりガラスの陰気さもない、ジェームズが唯一美しさを認めた鉱石。ジェームズはアラバスターを名乗り、世の中の美に復讐を重ねていく。
 というお話のはずなのだが、光線を浴びて死んだ女から生まれた透明な少女のほうが人気だったのだろう、話は主に彼女を中心として展開する。
 そりゃまあ、透明になっているということは実は人前で裸になっているのだなと妄想するほうが楽しいのでこればかりは仕方がない。

気に入った女は押し倒して無理やり犯す。手塚作品あるあるだ。


 ミクロイドSはアラバスターの後にチャンピオンに連載された。
 昆虫モノという企画は別人物による発案で、手塚が基本設定を考えて漫画を描き、それと並行してTVアニメも作られた。漫画とアニメが同時進行するスタイルはデビルマンと同じで、TVアニメはデビルマンの後番組がミクロイドSだったりする。

 アニメとは違いメカやロボは登場しない(第1話にのみ登場する)。虫をモチーフとしたさまざまな能力を持つ敵と戦ったり、ライバルキャラが主人公の兄でヒロインの許嫁だったりと、現在でも通用するような要素もなくはない。それでもいかんせん地味だ。ただひたすら人類が逃げ惑い死んでいく姿が延々と描かれることも多い。愚かな人間は主人公に近い人たちをも襲うことがある。このあたり、デビルマンの影響を受けているのかもしれない。
 アニメより早く、半年も持たずに終わった。ライバルを倒し、虫たちに指令を送るヘルメットを奪って奴らを日本から追い出すところで。

デビルマンではこの後最悪の展開になるが、本作では…?


 こういった迷走があって、「手塚の死に水を取る」というほどに期待されていなかった最後のチャンスがブラック・ジャックなわけだな。


 
240310 鳥山明○作劇場

 2024年3月、鳥山明が突然亡くなった。
 ご存知Dr.スランプやドラゴンボールは疑問の余地なく大傑作だが、それらに至るまでの短編に注目してみた。
 寺沢武一の項でも書いたが、ごく一時期ネットでバズった打ち切り漫画・タカヤを見ればジャンプのシステムがよく分かる。
 読み切りの短編を掲載して読者の評判がよかったら設定を固めて連載につなげていくという。

 鳥山明○作劇場はそんな鳥山明がDr.スランプやドラゴンボールに至る前の短編や連載中に描かれた短編が載っている。
 空きページに描かれた「あのころは青かった これをかいていたころのわし」「わたしはこうしてマンガ家になってしまった」も資料性が高い。


短編     長編
パジャマ姿で登場するヒロイン

『ギャル刑事トマト』(1979年)

『Dr.スランプ』(1980年〜)
失禁するヒロイン

『騎竜少年(ドラゴンボーイ)』(1983年)

『ドラゴンボール』(1984年〜)
カプセル

『トンプー大冒険』(1983年)
アイテム名は「いろいろカプセル」。お湯に入れて10秒待つ必要がある。
とはいえ、湯の入手に苦労したり待ち時間のせいでピンチになったりはしない。

『ドラゴンボール』
ご存知「ホイポイカプセル」。
カプセルコーポレーションの名が出るのはもう少し先。
タマがない

『騎竜少年』
ヒロインが水浴びするシーン。主人公は覗いているわけではなく
普通にヒロインの隣りにいるし、ヒロインは恥ずかしがっていない。

『ドラゴンボール』
ご存知、悟空がブルマの股間をパンパンして
違和感を感じてパンツを脱がせたシーン。説得力がダンチだ。
ハダカを見られて銃を乱射するヒロイン

『トンプー大冒険』
「ちょっとまってね」でしっかり着替えて
銃の使い方を教えてもらった後でその銃で撃ちまくるという
らんま1/2の第1話でも見られる時間差の面白さがある。

『ドラゴンボール』
ご存知、亀仙人の前でおっぴろげた後で
ノーパンだったことに気付いたときのシーン。
テンポいいわー。


 
240324 沈黙の艦隊

 沈黙の艦隊は1990年代に話題になったかわぐちかいじの作品。
 ウゴウゴルーガの中でシュールくんが「沈黙の艦隊って知ってる? あれ、魚雷の数の計算が合わないんだよね」と話しかけ、ウゴウゴくんとルーガちゃんが「知らなーい!」と元気よく答えたのを憶えている。
 2023年に実写映画になり、amazonプライムビデオで配信されている。

 今回、魚雷の数をカウントするのは面倒なのでせず、最終話に登場する海江田四郎の妻以外に女性キャラが出てくるかどうかを注目してみた。
 すると、アメリカ議会の中に女性議員を発見した。
 それにしても今読み直すと時代の変遷を感じるな。特に日本の国力の低下を。

潜水艦が空を飛ぶのはともかく(?)、
なんでその高度を測定できるのよ。


 
240414 武装錬金

 武装錬金はるろうに剣心の和月伸宏がGUN BLAZE WESTで見事にずっこけ、再起を図った作品。そこそこ続いたが最後は尻切れトンボになってしまい、週刊少年ジャンプではない別雑誌で完結編が描かれた。
 進撃の巨人の項で書いた「異能を持つ戦士が正体不明の怪物と戦う物語だったが、いつの間にか戦士同士がそれぞれの能力で戦う話になっていた」で真っ先に思いついたのがこれだった。
 現代社会で学校生活と正義の味方を両立させるのは殊の外難しく、私が知らないだけかもしれないが本作のほかにはウイングマンくらいしか思い浮かばない。

 気持ちが良いほどにまっすぐな性格の主人公、年上ヒロイン、人の姿を捨てひたすら主人公との戦いを望むライバル等、魅力的な設定は多いが、いかんせんバトルが面白くない。
 まこと漫画は難しいものであることよのう。

臓物(ハラワタ)をブチ撒けるヒロイン。

















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